大島事業所トピック№393 サザエは何を食べている?DNAを用いた主要餌料の同定

大島事業所トピック№393 サザエは何を食べている?DNAを用いた主要餌料の同定

サザエは重要な漁業対象種で、伊豆諸島北部では、資源を増やすため種苗放流も行われています。

この度、大島、利島、式根島、三宅島において、サザエが何を食べているのか新しい技術(DNA

バーコーディング)を用いて明らかにしました。

(水産技術第11巻第2号に掲載。以下は掲載論文より)

DNAバーコーディング手法

 DNAバーコーディングとは、種の違いを反映しているような遺伝子領域を標準的なDNAバー

コーとして用いることで、DNA配列を用いて種名を特定することが可能となる技術です。

 具体的には、サザエの胃の中に残っていた海藻片(1mm程度)を実体顕微鏡下で形態から大まかに分別

(グル別け)します(写真1)。各グループのうちの一片を試料とし、DNAを取り出し、COX1領域の

塩基配列を解析す。これをDNA情報が登録されたデータベース(NCBI)と照合し、相同性の高い種を

探し出しました。特段の技を必要とせずに種の同定が可能となります。

写真1.png

写真1 各島のサザエの胃内容物

    左上:伊豆大島(マクサ)  右上:利島(ムカデノリ科海藻)

    左下:式根島(ハイテングサ)  右下:三宅島(オキツノリ科海藻)  

    ()内はDNAバーコーディングの結果

サザエが食べている海藻は?

 サザエ(平均殻高50mm以上)の胃内容物をグループ分けしたもの(写真1)は、一見すると全

同じに見えます。しかし、DNA分析の結果、大島のサザエではテングサ科のマクサ(相同性100

%)、利島ではムカデノリ科の一種(同98%)、式根島ではテングサ科のハイテングサ

(同85%)、三宅島ではオキツノリ科の一種(同95%)を主に食べていることがわかりました。

 サザエを採集した場所では海藻植生も調査しました。主に食べていた海藻と採集場所の周囲に優

した海藻は概ね一致し、「周りに生えている海藻を食べている。」ことが示されました。

 実は、サザエの食性は、それらが生息する海域における海藻植生と密接に関連していることは以

より知られていました。ただし、近年、島によっては優占する海藻も変わってきています。定期

的な調査により傾向をつかむことは重要で、本手法は、その手助けとなる技術です。

PDF版はこちら事業所トピックNo.393(サザエの食性).pdf

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