内湾調査平成20年3月 羽田周辺で採集されたマハゼの成熟状況
平成20年3月内湾調査結果
春の内湾調査で出現した生物
東京都内湾では、ハゼ科魚類などの生物モニタリング調査の他、湾内で過ごすシラス期のアユの生息場調査や、2枚貝などの干潟生物調査を行っています。そこで採集したり見かけた生物を2,3ご紹介します。
アユは、例年、3月半ばを過ぎると、東京湾に注ぐ川の上流を目指して遡上(そじょう)し始めます。この遡上期のアユは全長6cmから7cm程に成長し、背面が黒く体側がきめ細かい銀色の鱗(うろこ)で覆われていて、オイカワやモツゴ等の川魚とは一目でわかる程、しなやかな動き方をします。この頃のアユは稚アユと呼ばれます。
そして、桜咲く4月上旬頃になると、川へと遡上する稚アユの姿が風物詩のように、毎年、新聞やテレビでよく紹介されます。
都市の川では、稚アユの遡上は4月,5月が盛んですが、遡上前の透明なシラス期のアユはシラスアユと呼ばれ、東京湾奥の干潟などの浅場を好んで生息しています。写真1のアユは3月11日に葛西臨海水族園前の人工干潟で採集したものです。
さて、春先の干潟では、幾つかのモクズガニが力尽きて死亡している場面によく遭遇します(写真2)。このモクズガニは、通常、川で見かけますが、成長して成熟する秋には産卵のために海へと下り、交尾、産卵する生活様式をとっています。
一方、水深5mから6m付近における底曳網調査では、写真3のような食べ物の“くずきり”のような姿をした透明な魚が入網することがあります。これは天麩羅や寿司ネタで馴染み深いマアナゴの幼生です。全く想像も付かない形ですね。
体形が柳の葉っぱに似ており、この葉形幼生を英語でレプトケファルス(Leptocephalus)と呼びます。この幼生は以前にもご紹介したように、日本の遙か南方から黒潮と呼ばれる海流に乗って来遊します。東京湾では水温が低下する冬春期が来遊盛期となりますが、成長は比較的早く、その年の晩秋以降に成長した個体から漁獲され、“江戸前のアナゴ”として市場に出回ります。
![]() 写真1 3月11日に干潟で採集したシラス期のアユ |
![]() 写真2 3月11日に干潟で見かけたモクズガニ(♀) |
![]() 写真3 3月13日底曳により採集したマアナゴ幼生 |
![]() 写真4 同マアナゴ幼生 |
羽田周辺で採集されたマハゼの成熟状況
マハゼの産卵生態や仔稚魚の出現状況については、2月にご紹介しました。今回、羽田空港周辺で底延縄により採集されたマハゼ親魚の生殖腺の成熟状況についてご紹介します(標本は東京都内湾漁業環境整備協会より提供)。
体長と体重測定後のマハゼをそれぞれ開腹し、中央の褐色Y字形に見える生殖腺部分を取り出して重量を測定します(写真1、写真2)。この測定は10月から翌年3月まで月別に行いました。
産卵時期を推定するために、月別の生殖腺指数値(生殖腺重量/体重×100;以下GSI値と呼ぶ)を計算し、月別に色分けして体長別に図示しました。
その結果、10月のGSI値は全体に低いものの、その後12月まで月を追って大型個体から値が高くなる傾向が見られました。しかし、1月から2月になると、GSI値はさらに高くなる傾向がみられる一方で、大型個体の中から10月程度の低いGSI値の個体が現れました。すでに産卵を終えた個体であると推測されます。
なお、平成20年3月13日に行った小型底曳網調査では、10mm前後に成長したマハゼ仔魚が三枚州から羽田にかけて採集されました。
![]() 写真1 マハゼの標本 |
![]() 写真2 マハゼの開腹(Y字状の褐色部分が生殖腺) |
平成20年3月13日 内湾水質調査結果
調査位置 | St.1 羽田洲 | St.2 羽田沖 | St.3 15号地 | St.4 三枚洲 | St.5 お台場 | |
時刻 | 9:23 | 8:40 | 10:40 | 10:15 | 11:20 | |
天候 | 晴 | 晴 | 晴 | 晴 | 晴 | |
風向/風速(m/s) | N/3.2 | NNW/2.7 | NW/2.1 | N/1.4 | SSE/3.7 | |
気温 (℃) | 10.7 | 10.7 | 10.9 | 10.9 | 13.9 | |
実測水深(m) | 4.3 | 5.4 | 5.9 | 3.4 | 3.1 | |
透明度(m) | 1.9 | 1.8 | 2.0 | 1.6 | 1.9 | |
水色 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | |
(暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | ||
水温 (℃) | 表層 | 10.29 | 10.76 | 10.93 | 10.40 | 11.56 |
底層(B-1)m | 10.25 | 10.36 | 10.01 | 10.01 | 11.49 | |
塩分(PPT) | 表層 | 29.68 | 27.35 | 27.37 | 29.23 | 27.71 |
底層(B-1)m | 29.74 | 29.22 | 30.32 | 30.24 | 27.94 | |
pH | 表層 | 8.46 | 8.32 | 8.43 | 8.48 | 8.38 |
底層(B-1)m | 8.43 | 8.42 | 8.46 | 8.50 | 8.39 | |
DO(mg/L) (%) | 表層 | 12.77 | 12.31 | 13.00 | 12.57 | 14.20 |
% | 137.6 | 132.2 | 139.9 | 135.5 | 156.1 | |
底層(B-1)m | 12.44 | 11.94 | 12.34 | 12.47 | 13.73 | |
% | 132.4 | 128.1 | 132.3 | 133.9 | 146.3 | |
濁度(ppm) | 表層 | 9.6 | 6.6 | 5.7 | 4.8 | 3.8 |
底層(B-1)m | 10.4 | 10.8 | 5.0 | 9.5 | 6.2 | |
電気伝導率 | 表層 | 46.00 | 42.99 | 42.77 | 45.40 | 43.22 |
(mS/cm) | 底層(B-1)m | 46.16 | 45.27 | 46.97 | 46.80 | 43.46 |
