溶存酸素の鉛直構造と気象条件から湾奥の海底をみる!?

 2枚貝などの底生生物の生残に関係深い溶存酸素量(DO)の観測は、観測指針に従い、底泥の巻上げによる誤差をなくすために海底直上1mで実施しています。また、調査が月1回であるため、生息環境の変化を連続的に捉えきれていません。そこで、平成21年度は、海底に近い層までの観測を注意深く行ってDOの鉛直構造を調べる一方、気象条件を加味して貧酸素水塊の形成パターンを検討し、海底の様子をある程度推測するようにしました。
 図1に21年6月から10月までの水温とDOの鉛直構造を示しました。高水温で海面が穏やかだった8月は、水温躍層が顕著に発達し、羽田沖(左列)の海底直上40㎝のDOは1.02㎎/l、同若洲沖(右列)は20㎝、0.26㎎/lでした。海底面のDOはさらに低下することが想定され、貝類等の移動性が低い生物の生息は非常に厳しかったと考えられます。これに対し、水温が比較的低く海面の乱れが想定された6月,7月,9月は、水温躍層は発達せず、DOは魚類がどうにか生きられる2~3㎎/l以上を維持しました。また、10月の水温は、表層が底層と同じか1℃ほど低いため鉛直混合が進んでおり、DOは魚類が過ごしやすい4~6㎎/l以上を維持しました。以上から、海底面付近のDOは、水温や海面の攪乱状態などに左右されて変動するものの、高水温期に海面が穏やかな日々が続くと貧酸素水塊が長期におよび、底性生物の生息を脅かすことが想定されました。

夏秋の水温酸素垂直分布

図1 平成21年夏秋期の水温・溶存酸素鉛直分布

注;左列は羽田沖、右列は若洲。○印は水温、●印はDO。各図左上の年月・St.Noに続く数値は、順に観測水深、観測機器着底水深を表す。なお、その差が海底面との距離差となる。

平成21年12月3日 内湾水質調査結果

内湾調査結果