平成18年12月 内湾調査結果

小型低曳網調査で採捕した生物

 小型底曳網に入る魚は、晩秋から冬期にかけて少なくなります。
 今回、荒川右岸側の若洲海浜公園付近でニホンイサザアミなどのアミ類に混じってカタクチイワシ(左下の写真)がようやく採集できました。アミ類を捕食するために集まっていたと考えられます。
 右下の写真は、お台場海浜公園の海上バスが行き交う航路脇で採捕されたトゲアメフラシです。体表には棘のような樹枝状の突起がみえ、とてもグロテスクな姿をしていますが、手にとって間近にみると、この突起の間にはブルーの斑点が多く点在しており、綺麗さが勝りました。
 分類上は、サザエなどの巻き貝と同様、軟体動物門腹足綱(類)にはいります。

カタクチイワシ

トゲアメフラシ


羽田周辺に延縄で採捕されたマコガレイ

 羽田空港周辺の浅場で、多数の釣り針がついた延縄漁具により採捕された魚類の消化管内を調べていますが、今回、マコガレイについてご紹介します。写真上段の左右シャーレ内に粒状のものが見えますが、これを拡大したものが下段の写真です。何であるのかおわかりになりますか!?
 よく見ると、円筒状の管が2つ重なって見えますね。これは、2枚貝が呼吸や餌を採ったり、糞などを排出するために、外部との水交換に使う“水管”と呼ぶ器官です。写真上段右、全長約16cmの小型魚から出現した水管は全部で52粒でしたが、同左約28cmの大型魚からは僅か1粒しか出現しませんでした。なお、マコガレイは冬期になると、産卵のために東京湾奥部へ移動してくる個体も見られますが、大型魚の腹腔は成熟中の卵巣(頭部右下に取り出した肌色の塊)により消化管が圧迫された状態でした。

マコガレイ1

マコガレイ2


小型個体の消化管内から出現した水管

 写真上は、小型個体の消化管内から出現した水管。


東京湾へ流下したアユの調査概要

 桜咲き水ぬるむ春になると、川の上流を目指して海から一斉に6cmから7cmに成長したアユが遡上します。このアユは、石に付着する藻類等の餌を食べて成長し、秋には砂礫の上に卵を産みつけて、わずか1年の短い一生を終えます。
 川でふ化した約6mmほどの仔アユは、東京湾に流下し、春までの間、口に見合った動物プランクトン(例えば写真右)などを食べて6cmから7cmに成長しますが、そのアユが好む場所を明らかにするため、昨年に引き続き11月より東京湾で分布調査を行いました。
 干潟からその沖合まで広範囲で調査した結果、干潟を中心とした浅場で採集数が多い結果が前年までと同様に得られました(表1,2)。
 このことから、干潟などの浅場は2枚貝や、ハゼ科魚類、カレイ類などはもちろんのこと、アユなどの魚類が増殖する上でも非常に大切な場所になっています。なお、採集したアユの大きさは下図のとおりです。

写真1

写真2


グラフ一覧


表1 シラスアユの採集密度


表2 シラスアユの採集密度


平成18年12月25日内湾水質調査結果

調査地点図はこちら

調査位置 St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
時刻 8:50 9:20 10:25 10:00 11:00
天候 曇り 曇り 曇り 曇り 曇り
風向/風速(m/s) N/3.8 NNE/5.5 NE/5.5 NE/5.0 N/3.0
気温(℃) 7.8 8.0 8.6 8.0 9.6
実測水深(m) 4.2 8.6 6.7 6.7 3.1
透明度(m) 2.7 2.5 2.7 2.6 2.9
水色 5GY3/3 5GY3/3 5GY3/3 5GY3/3 10GY3/4
(暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色) (暗緑色)
水温(℃) 表層 13.31 12.95 13.51 13.32 13.57
底層(B-1)m 13.38 13.96 14.75 14.12 14.24
塩分(PPT) 表層 31.05 28.66 30.17 30.48 27.70
底層(B-1)m 31.05 31.22 32.08 31.80 29.67
pH 表層 8.51 8.51 8.62 8.63 8.42
底層(B-1)m 8.47 8.56 8.61 8.62 8.45
DO(mg/L) (%) 表層 8.30 7.91 7.90 8.30 6.28
% 96.2 89.7 91.6 96.2 71.7
底層(B-1)m 8.21 7.28 6.77 7.30 5.90
% 95.0 85.3 81.3 86.5 68.9
濁度(ppm) 表層 3.0 3.7 4.1 3.5 3.1
底層(B-1)m 3.6 7.5 5.6 4.5 3.3
電気
伝導率(mS/cm)
表層 47.71 44.36 46.49 46.93 43.06
底層(B-1)m 47.71 47.79 49.03 48.72 45.77