葛西人工干潟“東なぎさ"における真夏の砂中温度と2枚貝の分布

 日射しが強まる夏期の大潮時は干潟温度が著しく上昇し、移動性が低い2枚貝の成育環境が一段と厳しくなることが考えられます。そこで、平成19年7月31日には、基準海面(大潮時の干潟高0m)付近から岸近くまでの5地点において、それぞれ砂面下5㎝層に自記水温記録計を埋設し、10分間隔の砂中温度(以下、温度と呼ぶ)を12月8日まで調べました。なお、図1に示すように、基準海面付近(干潟高0m)をAとしたE地点までの干潟高は、それぞれ30~40㎝程高くなっています。
今回、A地点の記録計は引き抜かれていたため、B~E地点のデータを検討しましたが、真夏の8月11日にはC,D地点の砂面下5cm層は34℃台に達していました。このことから、着底直後の潜砂能力の低い幼貝が生息するこれより浅い層の温度はさらに上昇し、同幼貝の生存は非常に厳しいものと考えられます。
さて、同年8月29日には数㎜サイズ以上の2枚貝の殻長別・潜砂深度を地点別に調べていますが、気温と潮位と温度との関係、さらには同2枚貝の潜砂行動との関係を見るために、図2に8月29日の午前0時から24時間の気温・潮位・温度を示しました。干潟高が最も高いE地点を除くB~D地点は、潮位が最も低下し気温が上昇する12~13時頃を中心に温度が上昇していますが、前述の11日と違ってせいぜい28.5℃程度でした。
一方、図3に示すアサリとシオフキの地点別・殻長別・潜砂深度図では、枠取り調査を終える12時頃に20cmほど海水で覆われたA地点の個体は、-3cm前後に多いのに対し、B~D地点はそれより深く潜砂しており、-10㎝程に達する個体も見られました。その中でも、温度がやや高かったB地点の個体はC、D地点の個体より深く潜っており、僅かな温度の違いにも反応していることが窺えました。
次に、アサリとシオフキの地点別分布密度(個体数/枠)を図4に示しました。海水に浸る時間が最も長いA地点(0m)の密度が最も高く、露出時間の長い岸側のE地点にかけて個体数が減少し、干潟高が1mに達するD地点では極端に減少しました。

 調査地点の干潟高

図1 調査地点の干潟高

 

方形枠自記水温計

 

写真1 50cmの方形枠と塩ビパイプにくくりつけて砂中に埋設しておいた自記水温計

砂中温度

図2 平成19年8月14日の砂中温度、潮高、気温
 注:潮高は海上保安庁晴海地点、気温は気象庁江戸川臨海部地点のデータを使用

シオフキ

アサリ

図3 シオフキ(上段)とアサリ(下段)の地点別・殻長別

潜砂深度

採集密度

図4 アサリとシオフキの地点別採集密度

 

平成20年9月17日内湾水質調査結果

水質調査結果