指導普及資料031022

ハゼ類以外の内湾魚類稚仔を紹介します。

10月も半ば、低層水の酸素量は回復してきました。

これに伴い、9月に発生した酸欠水から逃げていた生き物たちが戻ってきています。調査中St.1羽田洲では、肉眼で赤潮が発生し始めていました(水色21)。翌日の16日、東京都環境局の赤潮調査で変色域が都内湾で観測され、赤潮の正体はFibrocapsa Japonicaと後日に判明しました。この大量発生したプランクトンは、死ぬと粘液を放出し海面を膜状に覆ってしまいます。水面に浮いた海藻のノリに似ており、臭いもノリのようだそうです。一連の経過は、神奈川県水産総合研究所ならびに千葉県水産研究センターのインターネットホームページなどから概要を入手できます。


St.2 羽田沖で採集したギマ稚魚

St.2 羽田沖で採集したギマ稚魚

 フグ目のカワハギに似たの頭や胴なのに、団扇の形に似た尾でなく二叉の尾が特徴で、仔稚魚が内湾に生息する代表的な魚です。しかし、泳ぎが巧みなため、過去においても数多く採集できていません。 羽田沖や三枚洲ではフッコ(スズキ若魚)狙いの刺し網などに、数多くギマが掛かることがあります。十分食べられる魚ですが、現在、都内湾では食用とされないようです。体表のぬめりと酸っぱい臭いで、敬遠されるのでしょうか。


St.1 羽田洲で採集したテンジクダイ属spの稚魚

St.1 羽田洲で採集したテンジクダイ属spの稚魚
全長20mm、頭にイサザアミを付けてます。


写真下の稚魚は、テンジクダイ属spまでしか同定できませんでした。本調査では、昨年、今年とSt.2の羽田沖でテンジクダイ成魚を採集しており、もっと内陸寄りのSt.5お台場水域からも採集例があります。 テンジクダイの産卵期は7月から9月で、ちょうど1ヶ月後くらいには全長20mmになると推測されます。ですからテンジクダイでも構わないのですが、専門的な観点から差し控えています。理由は、第一背ビレが7棘なければならないところが、どう見ても6棘しかありませんでした。第二背ビレの方は、テンジクダイと同じ1棘9軟条でした。 本調査で確認されたテンジクダイ属は他に、テッポウイシモチがあります。こちらは、背ビレの棘条が採集稚魚に一致しますが、体色や模様が違いすぎます。水族館関係の方で、飼育魚の写真資料等でテンジクダイ属稚魚の情報がありましたらご連絡下さい。


平成15年(2003年)10月15日の内湾調査結果
調査位置 St1 羽田洲 St2 羽田沖 St3 15号地 St4 三枚洲 St5 お台場
調査時刻 10:54 10:23 9:11 9:39 8:26
天候 晴れ
風向/風力 北東/1 北/1 北西/2 北西/3 北/1
気温 18.0 17.5 17.0 16.0 15.0
水深(Bm) 3.1 5.4 7.1 4.5 5.5
透明度(m) 1.1 1.6 2.3 2.5 2.7
水色 21 18 19 19 20
水温
(℃)
表層 19.2 19.1 19.3 19.7 19.3
底層(B-1m) 18.9 19.4 19.8 19.9 20.4
塩分 表層 20.8 22.5 27.7 29.1 20.9
底層(B-1m) 26.2 27.5 31.3 31.2 28.0
pH 表層 8.18 8.03 8.22 8.36 7.69
底層(B-1m) 8.27 8.23 8.38 8.35 7.99
DO
(mg/l)
表層 7.7 6.4 7.0 7.0 3.9
底層(B-1m) 7.7 6.2 7.2 6.6 3.7
項目 湿重量(g)
魚類※ 0.50 2.30 12.12 0.49 28.25
甲殻類※ 194.73 4.05 0.70 6.65 0.82
その他水生生物※ 2.11 141.87 581.07 16.69 47.69

※現場で放流する個体を除く