二枚貝の分布と全硫化物(TS)との関係

 2013年6月、9月、10月に、葛西臨海海浜公園沖の三枚洲と呼ばれる天然干潟や荒川下流((河口から上流約5km地点)で、アサリなど二枚貝の稚貝がどのような底質環境下に生息しているのか調査しました(図1、2)。今回は、海底生物の毒性指標になる全硫化物(TS:Total Sulfide)との関係を紹介します(図3、4)。なお、海底が貧酸素化又は無酸素状態になると、硫酸塩還元細菌や硫黄酸化細菌がより活発化するなど、硫化水素(H2S)の発生と関連した動きがみられます。いずれにせよ、さまざまな形の硫化物が生成されてTSが高くなるようです。また、TSは水産用基準では、0.2㎎/g乾泥以下がふさわしいとされています。

   今回の調査では、シオフキ()、バカガイ()、アサリ()の3種はTS値が低い場に概ね集中しましたが、汚濁指標種とされるシズクガイ()、チヨノハナガイ()の2種とサルボウガイ()、汽水性ヤマトシジミ()などはTSが高い場でみられました。また、外来性のホンビノスガイ(○)は、TSが比較的広い範囲に分散していました。

 

  図1 図2

図1 三枚洲調査地点         図2 荒川調査地点

注)緑色のエリアは2m以浅             注)小松川橋付近  

   

 図3

 図3 TSの測定風景

 図4

図4 全硫化物(TS)と二枚貝の分布との関係(上から、6月、9月、10月)

注)図の横軸は対数で示す。

 

 

平成26年1月14日 内湾水質調査結果 

    St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
調査開始時刻 10:52 11:31 10:08 9:46 12:12
調査終了時刻 11:08 11:47 10:22 10:03 12:25
底曳開始緯度 N35 31 53.4 N35 33 24.8 N35 36 46.2 N35 37 17.8 N35 37 43.4
底曳開始経度 E139 47 35.7 E139 47 47.9 E139 50 16.2 E139 51 20.5 E139 46 12.6
底曳終了緯度 N35 31 52.5 N35 33 25.8 N35 36 46.8 N35 37 18.8 N35 37 42.7
底曳終了経度 E139 47 36.7 E139 47 48.8 E139 50 17.4 E139 51 19.7 E139 46 11.6
曳網距離(m) 36±3 37±3 35±3 36±3 35±3
天候
風向 N NE N N N
風速(m/sec) 3.8 5.8 4.3 7.8 1.6
風力 3 4 3 4 2
気温(℃) 5.9 5.8 6.8 5.6 7.8
実測水深(m) 2.4 5.5 5.9 4.5 3.1
透明度(m) 2.3 2.5 1.8 1.4 1.6
水色 5GY3/3        暗灰黄緑色 5GY3/3        暗灰黄緑色 5GY3/3        暗灰黄緑色 5GY5/8         黄緑色 5GY3/3        暗灰黄緑色
水温(℃) 表層(0.5m) 10.74 10.62 10.98 10.61 10.76
底層 (B-1m) 10.74 10.69 11.26 10.91 10.88
塩分 表層(0.5m) 31.0 30.1 32.1 31.0 30.9
底層 (B-1m) 31.0 30.8 32.3 32.1 31.0
DO(mg/l) 表層(0.5m) 9.05 8.87 9.07 8.20 8.71
底層 (B-1m) 8.97 8.74 8.41 8.59 8.33
DO(%) 表層(0.5m) 99.3 96.6 100.9 89.8 95.6
底層 (B-1m) 98.5 95.7 94.2 95.3 91.7
pH 表層(0.5m) 8.19 8.16 8.25 8.14 8.16
底層 (B-1m) 8.19 8.17 8.21 8.22 8.13
濁度 表層(0.5m) 2.4 2.4 3.4 5.8 4.6
底層 (B-1m) 2.8 2.4 8.0 5.8 8.3
電導度(mS/cm) 表層(0.5m) 34.8 33.8 36.1 34.7 34.7
底層 (B-1m) 34.8 34.5 36.6 36.0 34.9

 

 調査側点図

 調査側点図