お台場海浜公園の覆砂効果を検証

 江戸時代のペリー艦隊来航にあわせて造成された第三台場付近は、貯木場をへて平成8年に今の人工海浜公園として完成しました。貯木場跡は軟泥質の海底であったため生物の生息には適しない環境でしたが、覆砂による干潟・浅場造成を行ったところ、底質が大幅に改善され多様な生物が棲めるようになりました。今では、潮干狩りを楽しんだり、生き物に触れることができる環境学習の場として活用されるようになっています。

そこで、今後の浅場再生の基礎資料とするため、二枚貝と底質環境との関係を数値的に明らかにしたので概要を紹介します。

調査は平成26年10月16日に覆砂された干潟・浅場から30~40mほど沖合の嫌気性細菌(酸素がないところで増殖する)により海底に白い膜が形成された軟泥水域まで行いました(図1)。図2の上段には二枚貝の種類別個体数と覆砂の及ぶ状況をみる指標として泥分率(砂泥中の63μ以下の粒子率)を、下段には泥中の全硫化物(有機汚泥の程度を表し、数値が低い方が良い)と酸化還元電位(プラスなら酸化状態、マイナスなら還元状態を示し、プラス度が高い方が良い)を示しました。その結果、覆砂の影響が及ぶ泥分率が低い12m沖地点までは酸化還元電位がプラスで全硫化物も低いため、アサリやシオフキが多いのに対し、泥分率が高くなる24m沖地点では酸化還元電位が負の値を強く示し全硫化物も一気に高くなり硫化物耐性の強い外来性のホンビノスガイのみになりました。さらに覆砂の及ばない軟泥地点では環境が厳しくなるためホンビノスガイさえ確認できませんでした。

                        

図1

                図1 お台場海浜公園の調査地点 

 

図2

  

          図2 二枚貝の種類別個体数と底質環境

  注)上段は二枚貝の採集個体数と泥分率、下段は酸化還元電位と全硫化物の値

 

 

平成26年10月8日 内湾水質調査結果   

    St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
調査開始時刻 10:45 11:22 10:01 9:41 11:53
調査終了時刻

11:04

11:35 10:15

9:55

12:06

底曳開始緯度 N35 31 54.3 N35 33 28.3 N35 36 46.1 N35 37 18.0 N35 37 46.4
底曳開始経度 E139 47 36.0 E139 47 45.9 E139 50 15.9 E139 51 20.2

E139 46

15.8

底曳終了緯度 N35 31 53.5 N35 33 27.7 N35 36 46.7 N35 37 17.7 N35 37 45.6
底曳終了経度 E139 47 37.0 E139 47 47.1 E139 50 17.0 E139 51 18.8 E139 46 14.7
曳網距離(m) 36±3 37±3 34±3 37±3 37±3
天候
風向 ESE ENE

NNE

風速(m/sec) 2.3 0.9 1.1 0.0 0.0
風力 2 1 1 0 0
気温(℃) 24.5 25.3 24.8 22.8 26.2
実測水深(m) 3.8 5.2 5.5 4.1

2.9

透明度(m) 1.0 1.0

0.9

0.4 1.1
水色 5GY6/4     灰黄緑色 5GY6/4     灰黄緑色 10Y6.5/10      黄茶色 5.5Y7/5       灰黄色 5GY6/4      暗黄緑色
水温(℃) 表層(0.5m) 20.52 20.58

20.58

19.53 20.60
底層 (B-1m) 20.92

21.64

21.64 21.67 20.80
塩分 表層(0.5m) 8.8 7.8 15.3

6.7

10.3

底層 (B-1m) 19.3 25.7 30.0

29.5

14.2
DO(mg/l) 表層(0.5m) 5.96 6.65 5.31 6.11 4.00
底層 (B-1m) 2.93 2.73 4.27 5.16 3.05
DO(%) 表層(0.5m) 69.9 77.6 64.8 69.4 47.4
底層 (B-1m) 36.8 36.1 57.9 69.8 37.2
pH 表層(0.5m) 7.69 7.72 7.80 7.89 7.37
底層 (B-1m) 7.61 7.71 7.98 8.04 7.32
濁度 表層(0.5m) 9.2 7.9 9.1 23.6 8.0
底層 (B-1m) 7.3 2.8 4.7 2.6 7.4
電導度(mS/cm) 表層(0.5m) 13.9 12.3 22.9 10.5 15.9
底層 (B-1m) 28.6 37.5

43.2

42.5

21.6

 

 

 調査側点図

 調査側点図