葛西海浜公園沖の三枚洲で晩秋にみられた貧酸素水塊

 富栄養化した東京湾奥では、表層と下層との鉛直混合(対流)が停滞しやすい高水温期に、下層の溶存酸素濃度(DO:単位㎎/L)が著しく低下します。しかし、気温が低下しはじめる晩秋には、表層水温もほぼ同様に低下するため、対流が起きて貧酸素化が改善方向にむかいます。ところが、2013年11月の三枚洲(下表のSt.4)では、この時期としては珍しい貧酸素水が観測されました。そこで、当該水域における2013年のDOを2000年~2012年までのDOの平年値(13年間の平均値)と比較したところ、2013年11月の表層DOは4㎎/L、底層DOは5㎎/Lほど低いことがわかりました(図1)。これらは、各月の平年値の上下バーで示す標準偏差の3倍近くもあり、通常ではみられない現象といえます。なお、観測は、底泥が舞い上がって測定誤差が生じにくいように海底直上1mで実施しているため、それより下層の海底では更にDOが低い状態であったと考えられます。したがって、移動性が低い二枚貝や甲殻類は非常に厳しい環境下におかれたことになります。

   いずれにせよ、東京湾の再生を図るためには、生息場になる浅場造成とともに、貧酸素水の解消が重要となります。

 

  溶存酸素濃度

 図1 溶存酸素の変化

 

 

平成25年11月8日 内湾水質調査結果

  St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
調査開始時刻 12:31 13:12 11:28 10:56 13:48
調査終了時刻 12:48 13:22 11:41 11:17 14:07
底曳開始緯度 N35 31 56.0 N35 33 27.2 N35 36 46.7 N35 37 19.7 N35 37 45.3
底曳開始経度 E139 47 31.3 E139 47 46.5 E139 50 16.0 E139 51 21.6 E139 46 15.7
底曳終了緯度 N35 31 55.7 N35 33 26.6 N35 36 46.2 N35 37 20.4 N35 37 44.6
底曳終了経度 E139 47 32.5 E139 47 47.7 E139 50 14.7 E139 51 20.5 E139 46 14.5
曳網距離(m) 36±3 34±3 36±3 35±3 36±3
天候
風向 SSE E N NW W
風速(m/sec) 2.4 0.4 1.8 4.5 0.3
風力 2 1 2 3 1
気温(℃) 22.6 23.2 21.9 20.6 25.3
実測水深(m) 3.7 5.6 6.3 4.9 3.1
透明度(m) 2.5 4.7 4.6 2.7 3.9
水色 10GY3/4      暗緑色 10GY3/4      暗緑色 5GY5/8        黄緑色 5G5/4         灰緑色 10GY3/4      暗緑色
水温
(℃)
表層(0.5m) 18.6 19.0 19.7 19.6 19.5
底層(B-1m) 18.8 19.4 19.8 19.9 20.1
塩分 表層(0.5m) 24.3 25.6 31.0 30.9 24.8
底層(B-1m) 25.8 28.3 31.5 31.8 27.8
DO
(mg/l)
表層(0.5m) 6.1 5.6 2.9 2.8 4.8
底層(B-1m) 5.4 4.1 2.5 1.0 3.1
DO
(%)
表層(0.5m) 75.2 70.4 38.5 36.3 60.4
底層(B-1m) 67.8 52.3 32.6 13.8 40.5
pH 表層(0.5m) 7.81 7.76 7.76 7.75 7.68
底層(B-1m) 7.78 7.75 7.78 7.67 7.69
濁度 表層(0.5m) 2.0 1.3 1.0 2.1 1.1
底層(B-1m) 4.2 1.2 1.1 1.9 1.4
電導度
(mS/cm)
表層(0.5m) 33.57 35.38 42.73 42.47 34.87
底層(B-1m) 35.48 39.16 43.49 43.91 39.13