平成19年6月 内湾調査結果

小型低曳網調査の概要

 お台場では、4月,5月に引き続きニクハゼが多く採集されました。4月のホームページに稚魚時代の写真を掲載していますが、透明感のあった体に鱗(うろこ)と色素が形成され、ニクハゼらしい姿に成長しました。
 一方、羽田空港C滑走路沖の調査地点では、ヨウジウオが採集されました。本種は、お台場でも観察することができ、今の東京湾では珍しい魚ではなくなりました。さらに多くの生物(種類と量)を東京湾へ呼び戻すために、行政はもちろんのこと、都市で生活するひとり一人が環境意識を持っていきたいと思います。


お台場のニクハゼ

お台場のニクハゼ

羽田沖のヨウジウオ

羽田沖のヨウジウオ


お台場の浅場調査で見ることのできる生き物たち

 お台場の人工干潟では、引き潮で干潟が現れ始めると、下の写真のような砂粒を多数見ることができます。これはコメツキガニと呼ぶ小型のカニが、砂の周りに付いた藻類などの餌を活発に食べた跡の砂粒です。砂粒が丸いため、"砂団子"と通称呼ばれます。お台場に限らず、干潟を散策されたおりに見たことを思い出された方もおられるかと思います。
 本種はとても用心深く、人が近づくと一目散に生息孔に戻りますが、稀に孔が崩されていると、あわてて死んだ振りをすることがあります。
 “一寸の虫にも5分の魂”、か細いカニの意地を感じました。
 また、東京湾や運河に定着したホンビノスガイ(北米産の外来種)も、お台場で多数見ることができます。当該水域で昨秋に大量死したものの、生き残った個体や成長した個体は、アサリの生息場よりも1mほど深いところに帯状に分布しています。


お台場の人工干潟

お台場の人工干潟

潮が引いた干潟に現れる砂粒

潮が引いた干潟に現れる砂粒

生息孔を出入りするコメツキガニ

生息孔を出入りするコメツキガニ

ホンビノスガイ(写真奥は種から生長したアマモ)

ホンビノスガイ(写真奥は種から生長したアマモ)


今年のマハゼとマアナゴの幼魚情報

 下の写真は、羽田空港周辺で延縄漁具を使用して採捕されたマハゼとマアナゴの幼魚です(標本提供:東京都内湾漁業環境整備協会)。マハゼは概ね8cmから11cm、マアナゴは19cmの大きさでしたが、延縄には5号鈎を使用しているため、この程度の大きさになって採捕されます。
 羽田空港周辺に設定された定点調査では、6月のマハゼ採捕尾数は計48尾と、過去20年間の平均採捕尾数(9.7尾)の約5倍でした。
 東京都内湾浅場での遊漁船によるマハゼ釣りでは、昨年までの2年間、釣果は思わしくありませんでしたが、今回の結果が今後の“ハゼ釣り”に繋がることを期待したいと思います。
 なお、本漁具は海底に設置されるため、砂泥底を這うアカニシや、ツメタガイと呼ぶ肉食性巻貝の卵塊(平成18年8月のホームページで紹介)までが漁具に絡んで採れました。
 一方、筒漁具を使用したマアナゴの試験操業結果でも、明るい情報が得られました。
 昨年8月の本サイトでもご紹介したように、マアナゴの幼生は日本の遙か南方から冬春期に海流に乗って東京湾に移送され、通常、その年の7月、8月には筒漁具の孔から逃避できない大きさに成長する個体が徐々に現れます。晩秋にかけて採捕数が多くなる要因の一つと考えられます。
 このため、月別採捕数の推移を眺める際には、ある年の7月から、その翌年の6月までの期間に区切って採捕数を図示しています。
 ところが、6月に採捕されたマアナゴ93尾のうちの約3分の2に相当する60尾が、通常6月に採捕される個体より一回りも二回りも小さく、体長測定を始めたこの数年の中では珍しい現象です。
 この点を踏まえると、7月以降の採捕量は、過去2年間(凡例に示す緑色の2005年,朱色の2006年)の低水準は超えることが想定されます。
 “江戸前のアナゴ”が魚市場や店頭にたくさん並ぶことを期待したいものです。


マハゼ、アカニシ、茶碗を伏せたようなツメタガイの卵塊

マハゼ、アカニシ、茶碗を伏せたようなツメタガイの卵塊(本写真の右上)

マアナゴ

マアナゴ


年別・月別マアナゴ採捕尾数の推移

年別・月別マアナゴ採捕尾数の推移
注:尾数は、n年7月からn+1年6月


平成19年6月19日 内湾水質調査結果

調査位置 St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
時刻 9:08 9:58 11:00 10:41 11:39
天候
風向/風速(m/s) SE/2.3 SSE/1.1 SW/4.0 SE/2.5 無風
気温(℃) 23.5 24.0 26.2 25.6 26.8
実測水深(m) 5.4 6.5 4.8 5.3 2.3
透明度(m) 1.6 1.4 1.7 2.3 1.1
水色 5GY3/3 9YR3/3※ 5GY3/3 5GY3/3 9YR3/3※
(暗灰黄緑色) (褐色) (暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色) (褐色)
水温(℃) 表層 21.22 22.60 23.64 24.02 24.24
底層(B-1)m 22.70 20.60 21.37 21.54 23.48
塩分(PPT) 表層 30.00 26.89 20.58 20.47 23.56
底層(B-1)m 26.20 29.94 30.29 30.10 24.38
pH 表層 7.55 8.03 7.59 7.44 7.78
底層(B-1)m 7.57 7.56 7.57 7.20 7.51
DO(mg/L) (%) 表層 5.23 9.54 6.20 7.50 13.22
% 69.0 129.3 84.3 98.7 177.0
底層(B-1)m 4.93 3.87 5.37 5.30 11.67
% 66.5 52.3 73.0 71.5 158.2
濁度(ppm) 表層 7.2 4.3 6.3 9.2 8.1
底層(B-1)m 5.1 11.9 4.3 3.2 7.9
電気
伝導率(mS/cm)
表層 46.11 42.01 33.76 27.27 36.42
底層(B-1)m 40.20 46.35 46.63 46.57 38.48