平成20年5月内湾調査結果


干潟生物調査

5月23日に葛西臨海公園“東なぎさ”の基準海面付近(最も潮が引く0m地点)の波打ち際から岸寄りにかけての5地点で2枚貝の生息調査を行いました。
各地点で50cmの方形枠を置き、スコップ又は手で枠内の砂を砂面下10cmまで全て掘り出し、1mm目合いの篩(ふるい)にかけて標本を採集しました。
写真1 はその時の干潟です。当日は、日射がにわかに強まり、砂面上にうっすらと水蒸気が立ち上がりました。その様子が砂上で濃淡になって見えています。今後、7月、8月の大潮時に雲一つない晴天が重なれば、表層水だけでなく砂中温度も急上昇することが想定されます。
さて、当水域は昨年9月6日に襲来した台風9号の出水の影響で、アサリ、シオフキ、マテガイなどが全滅した場所です。幸いにも、その約50日後の同10月25日には、秋生まれのアサリやシオフキ稚貝が着底したことが確認されています(昨年10月のホームページ)が、今回確認した写真2 の大型個体は昨秋生まれの個体がその後成長したものです。
また、写真3、写真4 の稚貝は、春になって新しく着底したアサリ、シオフキですが、解剖針(直径0.98mm)と比べてみると、殻長1mm程の個体も混じっていることがわかります。
今後、これらの稚貝の成長や、生き残り、さらに7月,8月の炎天下における砂中生息深度を追跡する予定です。

写真1 露出した干潟(水蒸気は葦原前が顕著)
写真1 露出した干潟(水蒸気は葦原前が顕著)
写真2 昨年秋生まれのアサリとシオフキ
写真2 昨年秋生まれのアサリとシオフキ

写真3 1mm目合いの篩に残った砂や貝殻片から 稚貝などを選別して取り出す
写真3 1mm目合いの篩に残った砂や貝殻片から
稚貝などを選別して取り出す

写真4 稚貝の拡大写真(解剖針の直径は0.98mm)
写真4 稚貝の拡大写真(解剖針の直径は0.98mm)

多摩川河口では羽田空港のD滑走路建設工事が進んでいます(写真5)。その約1km上流は、内湾調査地点の羽田洲(St.1)です。
今回、底質調査中の採泥器にマナマコとワカメの茎が入りました(写真6)。多摩川河口であっても大規模な出水がない限り底層塩分は低下しないので、内湾性の生物が生息できます。

写真5 羽田D滑走路の工事風景(5月22日)
写真5 羽田D滑走路の工事風景(5月22日)
写真6 採泥器により採取したマナマコ(5月22日
写真6 採泥器により採取したマナマコ(5月22日)

平成20年5月22日 内湾水質調査結果

調査位置 St.1 羽田州 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚州 St.5 お台場
時刻 9:20 8:31 11:05 10:31 11:50
天候
風向/風速(m/s) SSE/3.3 SW/4.0 S/6.7 S/3.8 SSW/2.0
気温(℃) 20.4 20.1 23.5 22.3 25.1
実測水深(m) 5.2 5.9 5.5 3.1 3.7
透明度(m) 0.6 1.9 0.5 0.4 0.6
水色 10GY4/4 10GY3/4 5GY4/4 10Y5/4 10GY4/4
水温(℃) 表層 18.84 19.75 20.5 19.15 21.23
低層(B-1)m 17.74 17.68 17.41 18.51 18.08
塩分(‰) 表層 27.3 22.2 12.1 7.3 14.6
低層(B-1)m 31.4 32.2 33.0 32.1 30.4
pH 表層 8.06 8.12 8.32 8.12 8.08
低層(B-1)m 7.97 8.24 8.22 8.42 7.91
DO(mg/L) 表層 6.13 7.51 7.53 7.48 6.62
低層(B-1)m 6.51 6.54 6.33 7.54 5.52
濁度(mg/L) 表層 36.0 7.1 48.0 78.9 32.0
低層(B-1)m 72.1 12.7 25.7 77.1 23.8
電気伝導率(ms/cm) 表層 29.2 35.1 21.2 19.3 23.9
低層(B-1)m 47.8 49.6 50.3 49.2 46.8