平成19年5月 内湾調査結果

東京都内湾におけるサクラマスの採捕記録

 河川上流の渓流域に生息するヤマメの降海型のことをサクラマスと呼びます。ヤマメが海に下って豊富な餌を食べ、ヤマメと似ても似つかない大きな体に成長し、春以降に川へ遡上します。両者は同一種であることから、学名は共通のOncorhynchus masou masou(Brevoort)と記載されます。
 今回、東京都内湾でスズキなどを採捕する刺網漁業者から、「東京都内湾漁業環境整備協会」へ、4月26日以降、5月18日までサクラマス採捕報告が多数寄せられました。今年の報告件数は、4月,5月で計12尾にも達し、平成3年以降では最高でした(図1、表1)。
 さて、渓流に生息するヤマメの産卵時期は、東京では10月から11月頃。1ヶ月以上かけてふ化した3cm大の仔魚は、ふ化後1年で10数cmに成長し、一部が秋に海へ下り、その半年後に40cmから50cmに成長して川へ上ると考えられています。
 なお、東京都水産試験場(当島しょ農林水産総合センターの前身)で、過去、“サクラマス復活試験”として、降海型のヤマメをつくって河川放流したことがありますが、現在、東京湾に注ぐ荒川、江戸川、多摩川などの水系で、降海型サクラマスの放流情報はありません(埼玉県、群馬県などの水産研究機関、地元漁業者など)。


サクラマス

平成19年5月17日荒川河口で採捕されたサクラマス
写真提供:東京都内湾漁業環境整備協会

ヤマメ

平成19年6月8日多摩川の羽村で撮影したヤマメ
(奥に見える斑点のある魚)


図1 サクラマス採捕報告件数の推移


表1 平成19年 東京都内湾サクラマス採集記録

表1 平成19年 東京都内湾サクラマス採集記録
(財)東京都内湾漁業環境整備協会調べ


小型低曳網調査の概要

 毎月1回定期的に内湾調査を行っていますが、今年は春以降、ニホンイサザアミが大量に採集されています。下の画像は、5月18日にお台場で採集された同ニホンイサザアミで、収容するのに標本瓶(2リットル)4本が必要でした。
 角形容器の中には、白い物が見えますが、これらはハゼ科の稚魚で、1つは写真左下のニクハゼ、もう1つは右下のマハゼです。とくに、ニクハゼは、お台場に特徴的に多く出現し、先月は同水域で11,000尾を上回っていました(網口3m、高さ0.7m、長さ7mの漁具で海底を30m曳網)。
 なお、お台場では植物プランクトンが多く、光合成により酸素飽和度が表層で180%、下層でも100%を越えていました(下表参照)。


お台場で採集された同ニホンイサザアミ


標本瓶(2リットル)4本


ニクハゼ

ニクハゼ

マハゼ

マハゼ


平成19年5月18日 内湾水質調査結果

調査位置 St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
時刻 9:05 9:50 11:15 10:30 12:15
天候
風向/風速(m/s) S/4.5 SSW/8.1 S/7.2 SSW/8.0 SSW/3.7
気温(℃) 20.4 20.8 21.8 21.2 22.0
実測水深(m) 3.4 6.0 5.5 3.1 3.6
透明度(m) 1.1 1.9 1.0 1.8 0.6
水色 5GY3/3 5GY3/3 5GY3/3 10GY3/4 9YR3/3 ※
(暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色) (暗緑色) (褐色)
水温(℃) 表層 19.45 18.55 19.46 19.27 19.52
底層(B-1)m 18.13 17.39 17.93 18.92 18.80
塩分(PPT) 表層 19.64 28.51 16.34 18.93 24.09
底層(B-1)m 29.75 30.94 29.76 20.96 27.77
pH 表層 7.51 7.87 7.45 7.77 8.12
底層(B-1)m 7.65 7.70 7.81 7.76 7.74
DO(mg/L) (%) 表層 6.01 8.09 5.91 7.37 14.20
% 73.3 102.8 70.6 89.5 181.2
底層(B-1)m 6.66 5.59 6.76 7.15 8.53
% 84.2 68.8 85.1 86.8 109.1
濁度(ppm) 表層 9.6 5.0 21.6 5.9 9.0
底層(B-1)m 6.3 8.5 35.5 6.0 7.6
電気
伝導率(mS/cm)
表層 31.42 44.12 26.31 30.41 37.85
底層(B-1)m 45.80 47.61 45.73 31.22 43.16