東京湾奥に漂うミズクラゲ

 平成30年6月15日の小型底曳網調査では、東京湾の代表的なクラゲであるミズクラゲAurelia auritaが採集されました(写真1)。本種は、寒天状の半透明な体をした傘の直径20~30㎝ほどのクラゲで、初夏には干潟に漂着する姿や、運河沿いのゴミが集積する場に数多く集まっているようすが目につきます。沖合で、やや深めの皿を伏せたような形をして海面を群れで漂っている姿は優雅にみえますが、かつて異常繁殖した時に火力発電所などの取水口に詰まって冷却機能を低下させた他、底曳網に入って操業を中断せざるを得なかった厄介者です(写真2)。ところで潜水中に出くわすと、傘をゆっくりと開閉して移動していることから、いつどのようにして餌を摂ることができるのだろうかと不思議に感じるが、目をよく凝らして観察すると、傘の縁辺部にある触手基部付近にプランクトンが張り付いて茶褐色を呈していることで餌を捉えていることがわかります。なお、ミズクラゲは卵からふ化した幼生が海底の基盤に付着してイソギンチャクに似たポリプになった後に、横分体にくびれて直径3㎜ほどの花びらのような形のエフィラ(=ephira)になり、離脱・変態して成体と同じ形になっていきます。春期に海水を汲んで採集したエフィラを顕微鏡でみると、春の海に漂う小さな花びらのようにみえます(写真3)。

 

写真1

写真1  大型のミズクラゲ

 

写真2

写真2 羽田空港付近を漂っていたミズクラゲ(平成25年5月)

 

写真3

写真3 ミズクラゲのエフィラ幼生(平成24年3月)

   注)白いプレートの一辺は1㎜

 

 

図1 調査地点         

図1調査地点

 

平成30年6月15,22日 内湾水質調査結果

平成30年6月15,22日 内湾水質調査結果.xls [38KB xlsファイル] 

 平成30年6月15,22日 内湾水質調査結果