平成17年12月 内湾調査結果

湾奥のシラスアユと調査風景

11月に引き続き東京湾奥の6地点でシラスアユの分布調査を行いました。シラスアユの大きさは下図のとおりで、お台場(1,801個体)と城南島(219個体)の波打ち際で多く採集されました。各地点の沖合深場でも、前号で紹介したソリネットを使用して、海面から底層までの各層曳きを行いましたが、多摩川河口中央で記録程度のシラスアユが採集された他は全く網には入りませんでした。これらのことから、シラスアユは浅場を重要な生息場所にしているようすがうかがえます。その浅場を中心とした調査風景等の写真は、以下のとおりです。

多摩川河口浅場の曳網

多摩川河口浅場の曳網(飛行機の誘導灯付近)

羽田空港沖合の調査地点から滑走路を眺める

羽田空港沖合の調査地点から滑走路を眺める

城南島波打ち際での曳網(対岸の羽田空港が見える)

城南島波打ち際での曳網(対岸の羽田空港が見える)

お台場沖合での曳網

お台場沖合での曳網(ソリネット曳き網中)


三枚洲での曳網(葛西臨海水族園近くの人工干潟)

三枚洲での曳網(葛西臨海水族園近くの人工干潟)


下の2枚の写真は、実体顕微鏡を使用してシラスアユと他の類似種との選別作業を行っているところです。1,801個体のシラスアユが採集されたお台場の波打ち際では、形態が似たシラス期のカタクチイワシが4個体混じってました。


シラスアユとシラス期のカタクチイワシとの選別作業

シラスアユとシラス期のカタクチイワシとの選別作業

採集したシラスアユの計数・測定作業

採集したシラスアユの計数・測定作業


グラフ一覧


羽田空港周辺のマハゼ

東京湾のマハゼは、"江戸前の魚"の代表種で、釣り人の身近な対象種です。マハゼの産卵期は冬春期にみられ、砂泥中に数mほどの産卵のための巣穴(=産卵生息孔)を掘ります。親魚は、垂直にできた複数の巣穴の間にある連絡通路のような天井部に卵を産み付け、ふ化するまで卵を保護します。下の写真は、巣穴から顔を出しているところと、実際の産卵生息孔を型取ったものです(この生息孔では傾斜部の下半分に卵がありました)。さて、ふ化したばかりの子供は、海面を漂いながらプランクトンを食べて成長します。1cm前後の子供は2月頃からプランクトンネットで採集され、初夏には6cmから7cmに育ち河口や運河などで釣りの対象となります。そして水温が低下する秋(10月から11月頃)に10数cmに達したマハゼは、産卵のために深場へ移動します。なお、マハゼの寿命は通常1年ですが、それ以上生き延びた大型魚が初夏に釣れることもあります下の図は、約20年間に及ぶ羽田周辺4地点の延縄による標本船のマハゼ月別漁獲尾数と総重量の平均値をあらわしたものです(東京都内湾漁業環境整備協会資料の解析)。これから、1. 初夏には成長の早い個体から釣りの対象になり、2. 晩秋には成熟に伴い再び河口周辺に集合するために採集数が多くなる、3. これに対し、冬期には産卵行動に移行するため採集数が低下するのではないかと解釈できそうです。

巣穴から顔を出しているところ

実際の産卵生息孔を型取ったもの


羽田空港誘導灯付近のマハゼ釣船

羽田空港誘導灯付近のマハゼ釣船


標本船のマハゼ月別漁獲尾数と総重量の平均値をあらわしたもの


平成17年12月19日内湾調査結果

調査位置 st.1 羽田洲 st.2 羽田沖 st.3 15号地 st.4 三枚洲 st.5 お台場
時 刻 10:10 10:40 9:20 8:40 11:35
天 候 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ 晴れ
風向/風力 NW/1 NW/1 NE/1 NE/1 NE/2
気 温 ℃ 10 10 10 8 12
水深(B)m 5 8 5 4 3
透 明 度m 3.9 3.5 3.9 3.7 3.0
水 色 dg-bG dg-bG dl-G dl-G dg-G
水温℃ 表層 14.3 13.1 12.5 12.5 12.9
低層(B-1)m 14.6 13.6 13.4 13.3 13.3
塩分 表層 30.5 29.1 29.2 29.5 27.2
低層(B-1)m 30.7 30.0 30.2 30.1 28.1
pH 表層 7.99 7.99 7.96 7.96 7.94
低層(B-1)m 7.89 7.85 7.89 7.91 7.88
DOmg/L 表層 7.37 7.71 7.04 8.37 7.23
低層(B-1)m 7.53 7.80 7.61 8.02 7.24
濁度 表層 4.83 4.67 4.71 4.74 4.38
低層(B-1)m 4.85 4.79 4.82 4.81 4.53
電気伝導率 表層 8.3 5.0 5.9 4.2 4.4
低層(B-1)m 6.2 8.3 8.7 4.4 3.6