内湾調査平成18年4月 東京湾と都市の川で育つアユ!?
平成18年4月 内湾調査結果
東京湾と都市の川で育つアユ!?
前年の秋に川で産卵、ふ化したアユの子供(仔アユ)は、餌が豊富で水温など環境の安定した海に下り、冬春期を過ごします。そして、外敵から逃れたものが桜が咲き水ぬるむ春以降、川の上流を目指して一斉に遡上します。東京湾に注ぐ川では、おおよそ4月から5月の2ヶ月間で9割以上が遡上します。この間、江戸川と荒川では、河川放流用の稚アユを定置網で採捕する漁業が営まれています。
さて、海で動物プランクトンなどを食べて育ったシラス期のアユ(シラスアユ)は、川に上ると食性は一変し、石に付着する藻類を食べることにより急速に成長します。東京の川で唯一アユ釣りが行われている多摩川では、6月に入ってから"鮎釣り"が解禁となります。
今回、都市の川と東京湾を行き来するアユの主要河川における稚アユ採捕の様子や、東京都内湾で2年間行ってきたシラスアユ調査の結果概要を写真や図表でご紹介します。
1. 都市の川を遡上する稚アユと採捕漁業
上の写真は、多摩川調布取水堰(河口より13km)の東京側に設置されている第一魚道付近を群れて遡上する稚アユです。普段は、魚道を通過しますが、大雨による増水時には、このような場所から次から次へと群れて上る様子が観察できることもあります。
左下の写真は、江戸川にかかる葛飾大橋下流(金町ー松戸付近)に稚アユ採捕業者が設置した小型定置網です。右下の写真は、荒川の秋ヶ瀬取水堰下流(河口から約35km地点)に稚アユ採捕業者が設置した小型定置網です。
このように"稚アユ採捕漁業"が成り立つほど東京湾から稚アユが遡上していることをご存じでしたか?
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2. 東京湾におけるシラスアユ調査の概要
シラスアユ調査の様子をこれまで断片的にご紹介してきましたが、今回は、平成16年度、17年度に東京湾で行った同調査データを調査日・調査地点・調査方法別に分けて、表とグラフに採集状況をあらわしました。
2年間の調査から、シラスアユは湾入した波打ち際などの浅場で採集されやすく、その沖合(数百メートル内)ではほとんど採集できませんでした。
一方、この時期に出現するシラスアユと同サイズの姿形が酷似するシラス期のカタクチイワシは、波打ち際で記録程度混獲されることもありましたが、基本的には沖合で採集されました。
このことから、ハゼ科魚類やカレイ類などの稚魚と同じように浅場波打ち際はシラスアユにとっては、“好んで生息する場所=大切な場所”であると言えそうです。
なお、東京都内湾に現在みられる干潟は、多摩川および江戸川の河口天然干潟と人工的に造成された干潟で構成されていますが、底生の2枚貝などに限らず、アユなどの魚類にとっても干潟は非常に重要であることを示しています。
上図★は調査地点。
写真左下は多摩川河口浅場風景です。頭上を飛行機が次から次へと飛んでいく真下でアユをはじめ多様な生物が生息しています。
右下は城南島で平成18年3月28日に採集したアユです。遡上稚アユと変わらない全長約74mmの個体も混じっていました。
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3. 東京湾のシラスアユと多摩川に遡上した稚アユのふ化と成長
平成16年から17年にかけて東京湾と多摩川で採集したアユの耳石(頭部内耳にある石灰質の塊)に一日1本形成される日輪(右写真)を読み取り、旬単位のふ化グループ毎に束ねた平均体長を下図にあらわしました。
最初にまとまって現れたのは、10月下旬に河川でふ化した群で、早期ふ化群ほど多摩川への遡上が早く、遡上時の体長も大きい傾向がみられました。
今後、平成17年から18年の耳石資料や、アユの産卵、生残に影響の大きい関連情報などを整備して、アユの再生産のしくみを調べていきたいと考えています。
平成18年4月17日内湾水質調査結果
調査位置 | St.1 羽田洲 | St.2 羽田沖 | St.3 15号地 | St.4 三枚洲 | St.5 お台場 | |
時刻 | 10:48 | 11:40 | 13:00 | 12:20 | 13:45 | |
天候 | 晴れ | 晴れ | 晴れ | 晴れ | 晴れ | |
風向/風速(m/s) | SE/2 | SSE/2 | S/3 | SW/2 | SSW/2 | |
気温(℃) | 16.0 | 16.5 | 18.5 | 18.0 | 19.23.7 | |
水深(m) | 4.2 | 5.5 | 5.4 | 4.4 | ||
透明度(m) | 1.3 | 3.1 | 1.2 | 1.8 | 2.8 | |
水色 | 5GY5/8 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY5/8 | 5GY3/3 | |
(黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (黄緑色) | (暗灰黄緑色) | ||
水温(℃) | 表層 | 14.62 | 14.17 | 14.36 | 14.38 | 14.74 |
低層(B-1)m | 13.28 | 13.29 | 13.10 | 12.94 | 14.05 | |
塩分(PPT) | 表層 | 25.82 | 27.39 | 23.24 | 25.66 | 27.49 |
底層(B-1)m | 29.30 | 28.89 | 32.19 | 31.81 | 28.37 | |
pH | 表層 | 7.38 | 7.81 | 7.77 | 7.73 | 7.76 |
底層(B-1)m | 7.81 | 7.98 | 7.92 | 7.95 | 7.81 | |
DO(mg/L) (%) | 表層 | 7.51 | 8.91 | 7.63 | 8.10 | 7.25 |
86.6 | 103.0 | 86.1 | 92.8 | 85.2 | ||
底層(B-1)m | 8.52 | 8.50 | 7.89 | 8.42 | 7.01 | |
99.5 | 97.3 | 91.5 | 97.3 | 81.3 | ||
濁度(ppm) | 表層 | 10.2 | 0.3 | 11.7 | 11.1 | 4.5 |
底層(B-1)m | 5.8 | 3.3 | 3.5 | 2.2 | 7.8 | |
電気伝導率(mS/cm) | 表層 | 40.33 | 42.25 | 37.15 | 42.03 | 42.62 |
底層(B-1)m | 45.21 | 44.90 | 49.31 | 48.79 | 43.87 |
