羽田沖のマアナゴも夏期の貧酸素水塊を回避!

   天ぷらや寿司の材料としてよく知られるアナゴは、分類上はウナギやウツボと同じウナギ目に属し、晩秋に漁獲の盛期を迎えます。正式な名前(標準和名)はマアナゴと呼び、その幼生はウナギの幼生と同様に透明で柳の葉っぱの形をしています(写真)。そして、日本より遥か南方の東シナ海や台湾方面から黒潮に乗って移送されてくるのが有力な説ですが、ウナギよりも産卵生態などがよくわかっていません。
いずれにせよ、冬春期に日本各地に辿り着いた幼生のうち、成長の良い個体からその年の夏秋期に漁獲対象となります。

マアナゴの幼生

写真  真冬の1月に若洲海浜公園前でとれたマアナゴの幼生

 

マアナゴ採捕数

図1 羽田周辺におけるマアナゴの年別・月別採捕数と低層の酸素量との関係
   注:採捕数は、東京都内湾漁業環境整備協会が試験採捕した報告資料を使用。なお、平成14年度のみ隔月採捕となっている。

 

 さて、東京都の漁業者によるアナゴ漁は、羽田空港沖から東京湾アクアラインの川崎側の排気孔“風の塔"付近で操業されますが、夏期は木更津方面などに出漁します。これは底層付近の酸素不足によりアナゴがこの場を回避するからと考えられます(図1)。なお、夏期に貧酸素化が著しいのは、酸素量が多い上層の海水温が上昇し下層の海水と混ざらないうえ、下層では有機物を分解するバクテリアの活動がより活発になり酸素を大量に消費するからです。
 近年、南方から移送される幼生が減少したのも事実ですが、この数年間の夏期の貧酸素化は特に強く、全く採捕されないケースが見られます。この解決策の一つには、一人ひとりが汚濁負荷量を軽減する環境意識をもつ一方で、下水管で集められた排水をより一層浄化する施策が必要となります。

 

平成201112日内湾水質調査結果

水質調査結果