環境指標種とされるチヨノハナガイとシズクガイの分類

 今回、紹介するチヨノハナガイRaetellops pulchellus(Adams&Reeve)とシズクガイTheora fragilis (A.Adams)は、殻長15㎜ほどに成長する殻の薄い小さな貝です(上段左右の写真)。いずれも、泥分率の高い汚濁が進んだ水域に多く、水産庁の「漁場保全対策推進事業調査指針」では、有機汚染の程度を表す指標種としてモニタリングの対象種に指定されています。さて、富栄養化が著しい東京湾奥では、夏場を中心に底層の貧酸素水化が顕著に進むため、これらの汚濁指標種の生息も非常に厳しくなります。その実態を伝えるために、アサリなどの有用種とあわせて成長や個体数の変動を調べています。

 なお、殻が薄いため、現場でホルマリン固定した標本は、時間が経つと殻が溶けてしまい、軟体部(肉の部分)だけになることがあります。このような場合、軟体部の水管や、らせん状の消化管の形態を頼りに分類を行っています(下段右写真の黒矢印は水管)。

 

写真1 写真2

写真左がシズクガイ、右がチヨノハナガイ(チヨノハナガイは殻を開けた状態)
注:
白いプレートの一目盛は1㎜


写真3 写真4

写真左は分類・選別風景。写真右の上部2個体はチヨノハナガイ、同下部4個体はシズクガイ。

平成22年6月10日内湾水質調査結果 

  St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
調査開始時刻 9:52 10:38 8:38 8:07 11:28
調査終了時刻 10:14 11:07 9:12 8:30 12:00
底曳開始緯度 35 31 47.9 35 33 27.3 35 36 47.1 35 37 17.5 35 37 46.6
底曳開始経度 139 47 35.0 139 47 47.4 139 50 18.2 139 51 19.0 139 46 15.9
底曳終了緯度 35 31 48.6 35 33 26.9 35 36 46.0 35 37 18.9 35 37 45.8
底曳終了経度 139 47 36.2 139 47 48.6 139 50 18.9 139 51 19.1 139 46 14.9
曳網距離(m) 35±3 34±3 37±3 36±3 34±3
天候
風向 E E N NNE ENE
風速(m/sec) 5.4 4.8 5.1 4.2 1.3
風力 3 3 3 3 1
気温(℃) 23.8 23.8 22.3 22.0 25.8
実測水深(m) 2.1 4.8 4.3 3.5 2.8
透明度(m) 1.5 0.8 1.2 2.1 0.8
水色 5GY3/3    (暗灰黄緑色) 5YR2.4/4   (暗茶色) 10G2.4/3   (暗緑色) 5GY3/3    (暗灰黄緑色) 5GY3/3    (暗灰黄緑色)
水温(℃) 表層(0.5m) 21.46 21.92 20.98 21.27 21.43
底層    (B-1m) 20.68 19.41 19.77 20.06 20.99
塩分 表層(0.5m) 22.3 17.4 19.1 20.5 22.7
底層 (B-1m) 26.8 27.8 28.3 28.4 23.2
DO(mg/l) 表層(0.5m) 8.27 14.03 6.53 6.58 12.58
底層 (B-1m) 7.89 5.91 4.90 5.88 10.70
DO(%) 表層(0.5m) 106.9 177.7 82.1 83.9 162.9
底層 (B-1m) 103.1 76.0 63.5 76.7 137.7
pH 表層(0.5m) 8.54 8.82 8.25 8.42 8.56
底層 (B-1m) 8.57 8.38 8.33 8.45 8.45
濁度 表層(0.5m) 2.1 2.8 5.1 2.0 2.9
底層 (B-1m) 9.0 1.7 7.1 12.0 3.0
電導度(mS/cm) 表層(0.5m) 33.0 26.6 28.3 30.4 33.5
底層 (B-1m) 38.3 38.5 39.4 39.8 33.7