平成19年9月 内湾調査結果

三枚洲における干潟調査の概要 2

 三枚洲“東なぎさ”で、台風9号通過1週間後の9月13日に第3回目の定点調査を行いました。
 8月のホームページでご紹介しましたように、当該水域ではシオフキを中心にアサリなどの2枚貝が生息していましたが、残念ながら台風9号による出水規模が非常に大きかったため、生息場が著しく攪乱され、マガキを除く2枚貝は全滅したことがわかりました。
 その概要について画像を交えて説明します。
 なお、前回の調査(8月29日)は、砂面下15cmまで生息する2枚貝の調査であったことから、穿孔性が強く逃げ足の速いマテガイは調査対象外としてましたが、今回、出水規模が非常に大きかったため、動きが速いマテガイの死亡も砂中や砂面上で数多く確認できました(写真2から5)。
 また、A地点(春から初夏の大潮時に潮が最も引く付近)では、今回の出水によりヘドロ混じりの粘り気のある泥が海底面から5cm以上堆積(20箇所の平均)し、従来の海底との間で明瞭な2層構造をしていることもわかりました(写真3)。ちょうど、ケーキのスポンジの上にクリームが乗っている状態を想像してください。
 これは、東京湾口に向かって開放された半円弧状の土手(導流堤)をもつ“東なぎさ”の両サイドを通過した大量の雨水が運んだ泥や、巻き上げられたヘドロが、この地点付近に滞留・堆積したためと考えられます。
 海水が濁っていたので、その境界面を手探りで調べると、死亡し腐敗臭のする2枚貝が多数採取できました(写真3から5)。
 他方、A地点より岸寄りの地点では、ヘドロ状の泥は僅かに見られる程度でしたが、砂を掘り起こしていくと、砂面下10cmほどの層からも軟体部が腐敗したアサリやシオフキの死亡貝がみられました。
 いずれにせよ、大都市に住む生物の環境の厳しさを表しています。
 今後、秋期に定着した稚貝の分布・成長などの追跡調査を行いながら、当該水域の問題点の指摘と改善策の検討につながる調査資料の蓄積を図りたいと考えています。


写真1 多数見られる穴はアカエイによるものと考えられる

写真1 多数見られる穴はアカエイによるものと
考えられる

写真2 波打ち際ではマテガイの殻が所々に露出

写真2 波打ち際ではマテガイの殻が所々に露出

写真3 潮が最も引く基本水準面0地点(A地点)には写真上のヘドロが堆積

写真3 潮が最も引く基本水準面0地点(A地点)には
写真上のヘドロが堆積

写真4 既存の海底とヘドロの間に出て死亡した50cm方形枠内の2枚貝3種(A地点)

写真4 既存の海底とヘドロの間に出て死亡した50cm方形枠内の2枚貝3種(A地点)

写真5 軟体部が残っており強烈な腐敗臭が漂う(A地点)

写真5 軟体部が残っており強烈な腐敗臭が漂う
(A地点)

写真6 中間地点よりやや岸よりのD地点では自記水温計(中央黄色)が露出

写真6 中間地点よりやや岸よりのD地点では
自記水温計(中央黄色)が露出

写真7 D地点のみ

写真7 D地点のみ、砂面下5cm深に設置した自記水温計が露出していることから、表面砂が5cmから6cm移動したと考えられる

写真8 干潟で死亡した貝

写真8 干潟で死亡した貝

写真9 CとD地点の間で死亡した貝の干潟での様子

写真9 CとD地点の間で死亡した貝の干潟での様子

写真10 無数の鳥(対岸は浦安市)

写真10 無数の鳥(対岸は浦安市)


平成18年 水質、低質環境モニタリング結果

 東京都内湾で毎月1回の水質調査のほか、5月と9月には底質及び生物のモニタリング調査を行っています。今回、平成18年1月から12月までの水質データと平成9年秋期以降の底質データをグラフに表して、東京都内湾の現況をご紹介します。調査結果の概要は以下のとおりです。


1 水質調査(図1)

  1. 水温:最大値は8月の表面にみられ、St.1(羽田洲)の27.43℃の他は28.33℃から28.85℃の範囲でした。最小値は1月の表面にみられ、全地点で8℃台を示しまた。
  2. 塩分:底層塩分は、夏期を除いて4月以降全般に高く、St.3(若洲)、St.4(三枚洲)では32台の値を示しました。一方、表面はこれとは対照的に夏期を中心に塩分が低いケースがみられました。
  3. DO:DO値は初夏から秋期にかけて底層を中心に低く、6月と9月(8月は機器故障)には2mg/L以下になるなど、魚類や2枚貝が生息するのに厳しい値を示しました。
  4. pH:pH値は夏期と晩秋に比較的高い値がみられました。とくに夏期の8月には、河川水の影響により塩分が低いにも拘わらずがpH値が高めでした。

2 底質調査(図2)

  1. 泥分率(0.075mm目の篩を通過した粒子の%):春期(5月)のSt.3(若洲)で18.9%を示した他は、春期、秋期(9月)ともに80%以上と、泥っぽい状態でした。
  2. 硫化物:春期のSt.1(羽田洲)とSt.4(三枚洲)で低い値を示しました。この2地点はそれぞれ多摩川と荒川の流れの影響が強い地点です。
  3. 強熱減量とCOD値:春期のSt.4(三枚洲)のみが比較的低い値を示しました。

 なお、公共用水質基準値(COD20mg/g乾泥、硫化物0.2㎎/g乾泥以下)を下回ったのは、春期のSt.4(三枚洲)だけでした。


図1 水質(平成18年1月から12月)
図1 水質(平成18年1月から12月)


図2 底質(平成9年秋期から)
図2 底質(平成9年秋期から)


平成19年9月26日内湾水質調査結果

調査位置 St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
時刻 9:22 8:40 11:10 10:38 12:02
天候
風向/風速(m/s) NE/3.8 ENE/3.5 ENE/1.6 E/2.0 ENE/1.1
気温(℃) 22.0 22.0 25.1 22.9 25.8
実測水深(m) 2.5 5.3 5.7 3.1 2.5
透明度(m) 1.1 1.6 0.7 1.1 2.5< ※着底
水色 5GY3/3 5GY3/3 5GY3/3 5GY3/3 5GY3/3
(暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色)
水温(℃) 表層 23.19 23.45 24.05 23.33 24.47
底層(B-1)m 23.38 23.48 23.38 23.12 24.34
塩分(PPT) 表層 21.34 22.34 18.35 17.10 22.30
底層(B-1)m 23.35 23.11 25.95 25.31 23.62
pH 表層 7.79 7.71 7.46 7.66 7.29
底層(B-1)m 7.73 7.69 7.60 7.58 7.32
DO(mg/L) (%) 表層 8.10 7.28 3.94 7.20 5.17
% 108.5 97.4 52.5 95.4 70.3
底層(B-1)m 6.13 6.14 4.27 4.13 4.15
% 86.0 82.9 57.9 56.9 56.7
濁度(ppm) 表層 11.7 5.8 20.3 12.1 5.0
底層(B-1)m 16.4 5.9 29.2 6.4 4.8
電気
伝導率(mS/cm)
表層 33.92 35.37 32.15 28.40 35.32
底層(B-1)m 36.56 36.60 40.35 39.89 36.95