内湾調査平成18年6月 お台場の生き物と環境改善について
平成18年6月 内湾調査結果
お台場の生き物と環境改善について
東京湾奥では生活系排水に由来する窒素やリンなどの栄養塩が河川を通じて常に流入しています。これらの栄養塩や今までに湾内に蓄積された栄養塩を元にして、春以降の日射量の増加と温度上昇により植物プランクトンが大量発生します。プランクトンの発生が抑えられている冬の海は透明度が比較的良く、綺麗になったと感動された方も、初夏の茶褐色に濁った海水を見てギャップに驚かれたことがあるかと思います。
この原因となる植物プランクトン自体は、動物プランクトンや、ろ過食性の貝などが成長、増殖するために不可欠な餌ですが、東京湾では大量に発生(異常増殖)するため、それらが有効利用されることなく死滅し、海中に漂ったり海底に堆積してヘドロの元になり、高水温期には微生物による活発な分解過程で水中の酸素を急速に消費し無酸素水を形成します。とくに、海面の水温が高くなる夏場は、上下の水が混合することが少ないため温度躍層ができ、底層では酸素欠乏が生じやすくなります。お台場における6月の生物調査を通して、その一端がみえましたので写真でご紹介します。
写真1、2(5月26日に撮影)は、コーヒー色を呈するほどプランクトンが異常増殖し、赤潮と言える状態です。水面下20cmから30cmほどで全く見えなくなり、水中は真っ暗闇でした(植物プランクトンの光合成により酸素飽和度は209%、溶存酸素値DO10mg/L以上)。
写真3(同6月1日)は、プランクトンが幾らか減少し、透明度が少しアップしました。写真左上には移植したアマモの草体が見えています(5月30日には同85%前後、DO7mg/L弱)。
写真4、5、6、7(同6月13日)波打ち際と海底で観察できた2枚貝の死骸や瀕死の貝(同21%から48%、DO4mg/L弱)。なお、6月6日にはDOが1mg/L以下であったとの情報があり、大量死に繋がったと考えられます。
それでは、東京湾で生物が過ごしやすい自然環境を再生するにはどうすれば良いでしょうか!?
浄化機能の高い浅場の造成や汚泥の回収と覆砂など様々な改善方法がありますが、ここではこの他の事についてふれたいと思います。
都市化により、大量の生活系排水が河川や東京湾に注ぎ込んでいることは誰もが想像できることですが、東京湾の汚濁負荷の7割近くをこれらの生活系排水が占めていることを知る方は少ないかと思います。
各家庭の風呂場や流し台の排水孔から流れ出る排水が占める率が高いことは、個人の意識改革と習慣性を身につけるなどの心がけ次第で、誰もが河川や東京湾の改善に参加できると言えます。例えば、食器の油汚れはボロ切れなどで拭う、やむなく腐ってしまった牛乳、味噌汁などを流さない(=必要な分だけつくるか、残りは加熱したり、冷蔵庫に保管)、米のとぎ汁や食器のすすぎ水は保存容器に別途溜めておき、適宜プランターか庭の植物にあげるなど、家庭で習慣づけることも大切です。また、そのことを意識し、実践できた人が周りの人に伝えていくことも大切です。
この他、増水時に対応できる分流式下水道(雨水と生活排水との系列の分離)や栄養塩類除去のための下水高度処理化などの行政課題がいろいろとあります。
最後に、お台場の人口造成干潟で観察できる生物の写真を掲載しておきます。
写真1 5月26日赤潮プランクトン |
写真2 同5月26日水際の足ヒレや野帳も色が変化 |
写真3 6月1日、幾らか透明度がアップ。 |
写真4 6月13日、シオフキ、マテガイの死骸が目立つ |
写真5 6月13日、海底でのアサリ、マテガイ死骸 |
写真6 6月13日、衰弱して潜砂できないアサリ |
写真7 6月13日、死骸の脇ではアサリやシオフキの潮干狩り |
参考写真1 6月10日、マメコブシガニの雄(下)と雌(上) |
参考写真2 6月1日、ミズクラゲのアップ |
参考写真3 6月15日、外来種であるイッカククモガニ |
お台場に移植したアマモが生育し、種が形成される
初夏になるとアマモの生育環境も厳しくなりますが、それでも昨年11月に移植したアマモからお台場生まれの種子ができました。
6月14日 神奈川県走水のアマモ種子
6月1日 昨秋お台場に移植したアマモからできた種子
平成18年6月15日内湾水質調査結果
調査位置 | St.1 羽田洲 | St.2 羽田沖 | St.3 15号地 | St.4 三枚洲 | St.5 お台場 | |
時刻 | 8:45 | 9:10 | 10:16 | 9:45 | 10:55 | |
天候 | 曇り | 曇り | 曇り | 曇り | 曇り | |
風向/風速(m/s) | S/3.3 | SSW/4.0 | SSW/2.2 | S/2.0 | SSE/4.1 | |
気温(℃) | 22.4 | 23.2 | 23.3 | 23.4 | 24.5 | |
実測水深(m) | 4.5 | 6.5 | 7.5 | 4.4 | 4.0 | |
透明度(m) | 2.8 | 1.8 | 1.5 | 1.5 | 1.1 | |
水色 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | |
(暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | ||
水温(℃) | 表層 | 20.93 | 19.58 | 21.22 | 20.78 | 20.59 |
底層(B-1)m | 18.34 | 17.28 | 17.04 | 19.05 | 18.43 | |
塩分(PPT) | 表層 | 24.82 | 26.93 | 14.51 | 20.01 | 23.89 |
底層(B-1)m | 30.37 | 31.33 | 32.38 | 29.06 | 28.67 | |
pH | 表層 | 7.70 | 7.96 | 7.92 | 8.20 | 8.11 |
底層(B-1)m | 7.89 | 7.87 | 7.86 | 8.10 | 7.89 | |
DO (mg/L) (%) |
表層 | 5.57 | 9.45 | 8.42 | 11.61 | 11.38 |
72.1 | 119.6 | 103.8 | 146.0 | 146.2 | ||
底層(B-1)m | 4.86 | 2.23 | 1.41 | 6.20 | 3.08 | |
62.3 | 27.4 | 17.9 | 80.3 | 39.0 | ||
濁度(ppm) | 表層 | 7.8 | 4.5 | 8.3 | 8.5 | 7.9 |
底層(B-1)m | 4.1 | 2.2 | 1.9 | 7.4 | 3.6 | |
電気 伝導率 (mS/cm) |
表層 | 36.79 | 41.63 | 23.38 | 32.24 | 37.60 |
底層(B-1)m | 40.78 | 48.01 | 49.41 | 45.03 | 43.93 |
