内湾調査平成19年8月 三枚洲における干潟調査の概要
平成19年8月 内湾調査結果
三枚洲における干潟調査の概要
東京湾に注ぐ荒川と旧江戸川の延長線上に囲まれた浅場は三枚洲と呼ばれ、多摩川河口干潟の羽田洲とともに東京都内湾に残された貴重な自然干潟です。大潮時に潮が引くと葛西臨海水族園や東京ディズニーランドからもこの干潟を見ることが出来ます。
この自然干潟に隣接して、葛西臨海公園には“西なぎさ”と“東なぎさ”と呼ばれる人工干潟が造成されており、今ではこの人工干潟を含めて三枚洲と呼ばれているようです。いずれにせよ、干潟は水質浄化機能のある生物の大切な生息場であるため非常に注目されています。
しかし、かつてはアサリなどの漁獲対象生物の生産性が高かった三枚洲も、都市化の影響で、貧酸素水や低塩分水、波による攪乱等の影響を受けて生物生産性が著しく低下しています。
昭和58年に完成した“東なぎさ”では、覆砂(砂を入れる)時よりも砂場が硬くなり生物が潜砂できなくなったり、夏期の砂中温度の上昇!?などが生息制限要因となって、着底した幼生の生残と成長に影響していることが想定されます。
そこで、その実態を把握するため、“東なぎさ”において本年7月より、水質や底質の他、2枚貝の生息状況と砂中温度等の調査を行うことにしました。
第1回目の7月31日には、干潟を歩いて2枚貝が生息する範囲を選び、大潮時に潮が最も引く水際から葦原のある陸上近くまでの間に調査地点を5つ設け(基本水準面0mをA地点としE地点まで)、各地点には砂面下約5cmの深さに10分間隔で7ヶ月間記録可能な自記水温計を埋設しました。
第2回目の8月29日には、AからEまでの各地点に3×3mの大枠を張り、その中で時間の許す限り50×50cmの方形枠を用いて2枚貝の枠取り調査を砂面下15cmまで行いました。
なお、各回とも小型底曳網による稚魚調査も同時に行っています。
<調査概要>
- 現場の風景や調査の様子は写真1から8のとおりで、写真1に見える円形の穴はアカエイが掘った穴と考えられ、調査中にアカエイに度々遭遇しました。
- 分布確認できた2枚貝のうち、優占種であるアサリとシオフキの全個体について地点別・殻長別・垂直分布図を下のグラフに表しました(枠取りは、A2回、B11回、C6回、D8回、E5回実施)。
その結果、地点ごとの調査回数は異なるものの、本水域ではアサリ(図中▲印)よりシオフキ(●印)が著しく多い。大潮の干潮時に水際となるA地点(当日は水面下20cmから30cm)のアサリとシオフキは、他地点の個体より生息層は浅い傾向がある。B地点では、小型群(10mmから30mm)が10cm近くの深さまで潜砂しているのに対し、大型群(40mmから50mm)は6cm以内の深さに限られ、大きさによる分布差が見られました。なお、陸上の葦原に最も近いE地点では、上記2種は全く採集されませんでした。
写真1 葛西海浜公園 東なぎさの人工干潟(円形の穴はアカエイの掘り跡と考えられる) |
写真2 東なぎさ突端のテトラポッドと前面のカキ群落 |
写真3 基本水準面0ゼロ=最低水面の支柱(A地点) |
写真4 岸に向かうB地点(目印ひもの下には温度計を埋設) |
写真5 Eまでに至る中間の地点(C地点) |
写真6 B地点での枠取り風景 |
写真7 50cm方形枠調査の様子(砂面下15cm掘り) |
写真8 特別仕様の採泥器具(生物採集併用) |
上記グラフは、AからEの5地点で枠取り調査を行い採取した全てのアサリとシオフキをプロットしたもの
写真9 稚魚採集風景(網の間口3m、曳網距離30m) |
写真10 袋網部に入った生物の濾し取り |
写真11 赤褐色に見えるニホンイサザアミの |
写真12 エドハゼ(左上大型個体)、 |
平成19年8月30日内湾水質調査結果
調査位置 | St.1 羽田洲 | St.2 羽田沖 | St.3 15号地 | St.4 三枚洲 | St.5 お台場 | |
時刻 | 9:25 | 8:37 | 10:53 | 10:26 | 11:40 | |
天候 | 曇 | 曇 | 雨 | 曇 | 曇 | |
風向/風速(m/s) | NW/1.5 | NE/2.5 | N/1.5 | WNW/4.0 | N/3.0 | |
気温(℃) | 25.9 | 25.2 | 25.3 | 25.0 | 24.7 | |
実測水深(m) | 4.3 | 6.3 | 6.0 | 3.3 | 4.0 | |
透明度(m) | 1.8 | 2.3 | 1.7 | 1.9 | 1.8 | |
水色 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 10GY3/4 | 5GY3/3 | |
(暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗緑色) | (暗灰黄緑色) | ||
水温(℃) | 表層 | 26.75 | 27.16 | 27.53 | 27.47 | 27.16 |
底層(B-1)m | 27.35 | 26.93 | 27.44 | 27.61 | 27.08 | |
塩分(PPT) | 表層 | 23.81 | 24.67 | 23.47 | 21.52 | 22.92 |
底層(B-1)m | 27.87 | 28.20 | 27.33 | 26.79 | 28.66 | |
pH | 表層 | 7.64 | 7.84 | 7.81 | 7.81 | 7.59 |
底層(B-1)m | 7.96 | 7.71 | 7.82 | 7.86 | 7.59 | |
DO(mg/L) (%) | 表層 | 3.13 | 5.61 | 3.51 | 4.28 | 2.70 |
% | 45.9 | 80.7 | 51.5 | 61.3 | 39.2 | |
底層(B-1)m | 5.01 | 2.62 | 2.51 | 3.41 | 1.22 | |
% | 72.3 | 36.7 | 35.1 | 50.7 | 17.4 | |
濁度(ppm) | 表層 | 8.0 | 3.2 | 11.2 | 6.8 | 5.3 |
底層(B-1)m | 7.5 | 8.7 | 6.9 | 7.6 | 8.2 | |
電気 伝導率(mS/cm) |
表層 | 37.44 | 39.08 | 37.22 | 34.34 | 36.35 |
底層(B-1)m | 43.39 | 43.41 | 42.82 | 40.89 | 39.44 |
