二枚貝から若洲海浜公園沖の成育環境をみる?

 前号(平成25年9月)では、2010年1月から2012年12月までの二枚貝の採集状況を紹介しました。今回は、そのうち採集量が多かった2010年のアサリ、サルボウガイ、シズクガイ3種と2011年のチヨノハナガイの月別・殻長組成の推移をもとにして、当該水域における二枚貝の成育状況を検討しました(図1)。

 図から、全ての種で1~3㎜サイズの個体がほぼ優占するなど新規加入が確認できるものの、殻長組成から3カ月の生残がたどれそうなのがアサリ(6~8月)とチヨノハナガイ(4~6月、5~7月)の2種で、この他は1~2ヶ月の短期間で死亡するものと考えられました。 

 この要因の一つに、①海水温度が上昇するこの時期には上下の鉛直混合が停滞して酸素量の多い表層水が底層にいきわたらないうえ②底泥中の有機物(植物プランクトンなどの死骸や陸起源の有機物)を細菌が分解する過程で酸素を大量消費し貧酸素化が一気に進み、その貧酸素下で硫化物の生成が促進されるからと考えられます。なお、貧酸素化の規模(溶存酸素量の低さと持続期間)は、同じ夏秋期でも水温の上昇程度や波浪などの気象条件に左右されて変動します。

 

  貝類殻長組成図

図1 二枚貝採集数の推移

注)図中の採集日の下段は採集個体数

 

貝類写真 

 左より:アサリ、サルボウガイ(右はアカガイ)、シズクガイ、チヨノハナガイ

写真内の一目盛りは1㎜  

 


平成25年10月7日内湾水質調査結果

 

    St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
調査開始時刻 9:46 10:25 9:00 8:40 10:58
調査終了時刻 10:06 10:39 9:20 8:55 11:11
底曳開始緯度 N35 31.866 N35 33.429 N35 36.780 N35 37.328 N35 37.755
底曳開始経度 E139 47.605 E139 47.783 E139 50.283 E139 51.383 E139 46.257
底曳終了緯度 N35 31.854 N35 33.414 N35 36.779 N35 37.339 N35 37.742
底曳終了経度 E139 47.624 E139 47.799 E139 50.260 E139 51.402 E139 46.240
曳網距離(m) 37±3 37±3 36±3 35±3 36±3
天候
風向 NNE ENE NE NNE
風速(m/sec) 2.3 0.6 3.6 2.9 0.0
風力 2 1 3 2 0
気温(℃) 25.5 25.5 24.3 23.3 26.4
実測水深(m) 4.0 5.1 5.1 4.0 3.0
透明度(m) 2.9 2.9 2.9 2.7 2.5
水色 10GY3/4      暗緑色 5GY3/3        暗灰黄緑色 10G2.4/3        暗緑色 10G2.4/3        暗緑色 5GY3/3        暗灰黄緑色
水温(℃) 表層(0.5m) 22.37 22.62 22.14 22.19 22.92
底層 (B-1m) 22.47 22.13 22.19 22.15 22.62
塩分 表層(0.5m) 26.7 23.6 27.4 27.3 25.0
底層 (B-1m) 27.4 29.5 31.2 30.7 26.8
DO(mg/l) 表層(0.5m) 5.33 6.12 6.06 5.39 4.31
底層 (B-1m) 5.11 3.00 3.11 4.88 2.75
DO(%) 表層(0.5m) 71.8 81.4 81.7 72.7 58.2
底層 (B-1m) 69.2 41.0 43.0 67.0 37.2
pH 表層(0.5m) 7.87 7.78 7.99 7.92 7.67
底層 (B-1m) 7.89 7.81 7.89 7.99 7.58
濁度 表層(0.5m) 1.8 1.4 1.7 1.9 1.7
底層 (B-1m) 1.8 5.8 5.9 5.0 1.3
電導度(mS/cm) 表層(0.5m) 39.4 35.5 40.2 40.2 37.7
底層 (B-1m) 40.5 43.0 45.3 44.5 39.9