平成19年12月 内湾調査結果

多摩川下流から河口までのアユの分布と水質

 河川下流域の生物成育機能を把握するため、12月19日に河口から上流約11kmのガス橋までの水域で仔アユ等の生物と水質環境を調べました。
 干潟などの浅場では小型地曳網、河川の中央ではソリネットを用い、表層と底層(3m)の2層を曳網しました。
 表1に、これらの地点別出現概要を示しました。また、図1には出現種と水温、塩分を一括して示しました。
 その結果、河口から上流約9kmの多摩川大橋までの底層は、塩分が25~30と内湾水とほぼ同様であることがわかりました。一方、表層では、河口から上流約6kmの六郷橋で2.5、その上流4.5km(河口からは10.5km)のガス橋では1以下の値を示すなど、内湾由来の比重の高い海水が上流奥まで底層から侵入し、その上を河川水が覆うかたちで流れている様子がわかりました。
 なお、河口浅場を除く塩分が比較的高い上流区間では、底層温度が表層より3℃ほど高いこともわかりました。
 このような塩分と水温の鉛直分布構造に対応するように、上流で採集される流下直後の仔アユはほぼ表層に分布するのに対し、内湾性のアミ類やヤムシ類は底層に分布する特徴が見られました。


写真1 ソリネット
写真1 ソリネット
写真2 羽田空港誘導灯浅場地点(最も下流)
写真2 羽田空港誘導灯浅場地点(最も下流)

写真3 川崎よりのセントラル硝子前の浅場
写真3 川崎よりのセントラル硝子前の浅場

写真4 持ち帰った標本から魚類等を選別
写真4 持ち帰った標本から魚類等を選別

写真5 大師橋上流の泥干潟で採集した稚貝
写真5 大師橋上流の泥干潟で採集した稚貝

写真6 同左をアップ(1mm程度のアサリなど)
写真6 同左をアップ(1mm程度のアサリなど)

表1 アユ等主要生物の出現状況
表1 アユ等主要生物の出現状況


注)地点名に干潟と記載されているのは泥干潟を、全層と記載されているのは水深が3mより浅く2層曳きができない地点を表す。


図1 アユ等主要生物の層別出現量と水温、塩分分布 平成19年12月14日内湾水質調査結果
図1 アユ等主要生物の層別出現量と水温、塩分分布


平成19年12月14日内湾水質調査結果

調査位置 St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
時刻 9:07 8:28 10:18 9:59 10:59
天候
風向/風速(m/s) N/6.5 NW/6.0 NW/4.0 NW/6.5 N/3.1
気温(℃) 9.2 9.1 10.4 10.8 10.9
実測水深(m) 4.9 7.6 6.4 6.2 5.2
透明度(m) 2.8 1.9 2.2 2.4 2.5
水色 5GY5/8 10GY3/4 5GY5/8 10GY3/4 5GY3/3
(黄緑色) (暗緑色) (黄緑色) (暗緑色) (暗灰黄緑色)
水温(℃) 表層 13.92 13.94 14.60 14.63 14.57
底層(B-1)m 14.21 14.56 15.37 14.73 15.39
塩分(PPT) 表層 30.82 28.07 32.17 32.07 28.56
底層(B-1)m 31.84 31.70 32.69 32.29 30.89
pH 表層 7.53 7.33 7.55 7.55 7.37
底層(B-1)m 7.45 7.26 7.38 7.46 7.37
DO(mg/L) (%) 表層 7.49 6.81 6.67 6.69 6.13
87.6 78.6 80.3 80.5 72.1
底層(B-1)m 7.35 6.60 6.36 6.87 6.10
87.3 78.9 75.4 82.2 72.8
濁度(ppm) 表層 3.2 4.1 2.6 3.4 3.5
底層(B-1)m 3.1 4.5 6.7 3.8 3.8
電気伝導率(mS/cm) 表層 47.28 43.53 49.16 49.68 44.08
底層(B-1)m 48.75 49.34 49.91 49.51 47.36