内湾調査平成20年4月 葛西海浜公園の人工干潟出現生物と漁業
平成20年4月内湾調査結果
湾奥域の出現生物と漁業
葛西海浜公園の人工干潟で4月21日、地曳網による生物調査と干潟観察を行いました。
写真1 はその時の様子ですが、水温が上昇しプランクトンが発生しやすいこの季節に合わせて、干潟に様々な生物が現れます。一部ご紹介します。
写真2 はイシガレイの稚魚です。東京湾奥の干潟では3月から4月頃に出現します。成長した個体は、背縁下など数カ所に出っ張った石状骨質板が現れるため、和名の由来にもなっています。店頭で販売されているイシガレイの背面(褐色部分)を見れば納得できるでしょう。
写真3 はシラス期のアユです。多摩川など東京湾に注ぐ川では、10月から11月頃からふ化した仔アユ(約6mm)が東京湾へ下り始め、6cmから7cm程に成長した個体が3月半ばぐらいから遡上を開始します。今回採集した4cmにも満たないアユは、水温の低い冬期にふ化して東京湾へ下ったものでです。
写真4 は赤い縞模様のあるアカクラゲと白い寒天状のミズクラゲです。ミズクラゲは手で触ってもほとんど被害はありませんが、もう一方のアカクラゲは触手にある刺胞毒が強烈で、文献によると呼吸困難に陥ることがあると記載されています。海岸に行くと、危険生物を示した“立て看板”に、アカエイと並んで名前が出るほどですから、波打ち際に打ち上がっている個体を発見したら水に入る時には十分注意して下さい。
因みに、痛みの程度を知るために触手の一部に手を触れてみたところ、手の平より手の甲で激痛が走り、数時間も痛みが続き、皮膚がただれた状態になりました。海中を漂う成体の触手は数十本あり、長さは50cmから60cmほどですから、これらが顔や体に巻き付いたら相当の被害を受けることになります。
なお、水中での動きは、ミズクラゲよりアカクラゲの方が活発で、盛んに傘を膨らませたり縮めたりしながら遊泳する速度は意外に速く、潜水観察中少し目をそらした隙に見失うこともあるほどです。
![]() 写真1 地曳網調査風景 |
![]() 写真2 入網したイシガレイ |
![]() 写真3 入網したシラス期のアユ(採集時は透明) |
![]() 写真4 海面を漂うアカクラゲとミズクラゲ |
東京湾奥の5地点で小型底曳網を使用して4月23日に調査を行いました(写真5:曳網距離は約30m)。
魚類の採集量が最も多かったのは多摩川河口の羽田洲で、写真6 のようにイサザアミ類と変わらぬ大きさの小さな仔魚(鰭条数が成魚の数に達しない)が総計17,073個体採集されました。そのうち、マハゼが9,211個体(54%)、エドハゼが6,413個体(37.6%)と、この2種で全体の91.6%を占めました。
変わった種類としては、お台場で採集した写真7 のユウレイボヤ類(カタユウレイボヤ)です。ホヤと名が付いても食べる対象にはなりませんが、お台場では水深3mから4m程の海底から木くずやロープ、貝殻等に付着したものが採集されます。東京湾で長期間係留放置されていた船が陸上に上げられた際、本種が船底にびっしりと張り付き、垂れ下がっている光景を見かけることがあります。
お台場周辺では、船の科学館前に係留されている大型船と岸壁との間の薄暗い部分に、まるで白い花が咲いたように多数付着している様子が観察されます。
なお、写真8 のカタユウレイボヤは、お台場に設置されている水中フェンスの底層部で過去に撮影したものです。アサリなどの2枚貝のように、海水をろ濾している口の部分が見えるかと思います。
![]() 写真5 小型地曳網(=小型底曳網) |
![]() 写真6 ハゼ科魚類(約15mm、多摩川河口の羽田洲) |
![]() 写真7 取り上げたユウレイボヤ類(カタユウレイボヤ) |
![]() 写真8 水中のカタユウレイボヤ(平成18年5月撮影: 長い方が入水管、短い方が出水管) |
東京都内湾におけるスズキの漁獲量は、この10年間程100トンから200トンの水準を維持しています。設置しておいた網に刺さったスズキを捕る刺網漁の他、写真9、写真10に見られるような2艘で操業する巻刺網漁を見ることもできます。
![]() 写真9 羽田国際空港C滑走路前の巻刺網船 |
![]() 写真10 同巻刺網船 |
平成20年4月23日内湾水質調査結果
調査位置 | St.1 羽田州 | St.2 羽田沖 | St.3 15号地 | St.4 三枚州 | St.5 お台場 | |
時刻 | 9:45 | 8:55 | 11:05 | 10:43 | 11:45 | |
天候 | 曇 | 曇 | 曇 | 曇 | 晴 | |
風向/風速(m/s) | E/2.5 | E/2 | -/0 | -/0 | SE/3 | |
気温(℃) | 17.0 | 16.5 | 18.5 | 17.8 | 22.0 | |
実測水深(m) | 3.4 | 4.5 | 5.0 | 3.2 | 3.8 | |
透明度(m) | 1.4 | 1.6 | 0.8 | 1.0 | 1.2 | |
水色 | 10GY4/6 | 10GY4/3 | 5GY4/4 | 5GY4/4 | 10GY4/4 | |
水温(℃) | 表層 | 16.21 | 15.11 | 15.83 | 15.60 | 16.60 |
低層(B-1)m | 16.01 | 14.78 | 14.71 | 14.80 | 15.93 | |
塩分(‰) | 表層 | 20.2 | 21.4 | 19.5 | 19.1 | 20.8 |
低層(B-1)m | 22.6 | 26.3 | 26.0 | 26.2 | 24.7 | |
pH | 表層 | 8.00 | 8.23 | 8.18 | 8.14 | 7.80 |
低層(B-1)m | 8.01 | 8.02 | 8.06 | 8.06 | 7.88 | |
DO(mg/L) | 表層 | 9.54 | 8.77 | 9.34 | 10.69 | 11.21 |
低層(B-1)m | 7.40 | 6.17 | 7.15 | 9.02 | 7.20 | |
濁度(mg/L) | 表層 | 12.3 | 9.1 | 20.5 | 16.8 | 15.8 |
低層(B-1)m | 15.3 | 7.0 | 14.7 | 10.4 | 18.8 | |
電気伝導率(ms/cm) | 表層 | 33.7 | 36.2 | 32.5 | 33.1 | 33.9 |
低層(B-1)m | 38.4 | 42.3 | 43.7 | 43.7 | 40.8 |
