平成19年7月 内湾調査結果

小型底曳網調査で採取した生き物

 台風4号通過後の7月18日の調査では、多摩川河口や三枚洲の調査地点でジンドウイカ、C滑走路付近の調査地点でマハゼ、イシガニ、ヒトデ、クモヒトデ類、シズクガイなどの多様な生物が出現しました(写真1から6)。
 一方、お台場の調査地点では、当該水域で特異的に現れるマンハッタンボヤやユウレイボヤ類が優占し、先月まで出現量の多かったニクハゼは全く出現しませんでした(写真7)。海が攪乱され低塩分水に覆われたことが、ニクハゼの分布に影響を及ぼしたのかもしれません。
 また、先月まで大量に出現したニホンイサザアミの成体は皆無に近く、この替わりに同種と推定される小さな幼生が袋網に入りました。
 なお、三枚洲では袋網を上げる際、大量のミズクラゲが入網したのかと思わせるほど網が重かったのですが、中身を調べると、川の中流で産卵されたハクレンの卵が大量に海へ流されて網が目詰まりを起こしたことが原因であると判明しました(写真9、10)。
 水質環境は、全体に塩分やpHが低く、酸素飽和度も底層では特に低くなっていました。


写真1 多摩川河口

写真1 多摩川河口(羽田空港誘導灯付近の様子)

写真2 同地点で採取したジンドウイカ

写真2 同地点で採取したジンドウイカ

写真3 羽田空港C滑走路沖地点で採取した生物

写真3 羽田空港C滑走路沖地点で採取した生物

写真4 写真左の拡大

写真4 写真左の拡大(マハゼ、ヒトデ、アカニシの卵塊ほか)

写真5 同じくC滑走路で採取したイシガニ

写真5 同じくC滑走路で採取したイシガニ

写真6 同イシガニの腹甲部(雄のため鋭角)

写真6 同イシガニの腹甲部(雄のため鋭角)

写真7 お台場のマンハッタンボヤとユウレイボヤ類

写真7 お台場のマンハッタンボヤとユウレイボヤ類

写真8 三枚洲の調査地点から見る東京ディズニーランド

写真8 三枚洲の調査地点から見る東京ディズニーランド

写真9 三枚洲で袋網を目詰まりさせた透明物体

写真9 三枚洲で袋網を目詰まりさせた透明物体

写真10 透明物体等の拡大写真

写真10 透明物体等の拡大写真(ハクレンと推定される数mm大の卵とニホンイサザアミと推定される幼生)


お台場で観察された生き物たち

 7月20日にお台場の人工干潟で潜水調査を行いました。海底の砂泥上では、マテガイを中心にカガミガイやホンビノスガイの死殻がやや目立ちました。また、普段の調査で見る機会が少ないトリガイやバカガイ(寿司ネタのアオヤギ)も腐敗又は衰弱した状態で確認できました。
 東京都内湾では水質が一定レベルまで好転したものの、高水温期には生物にとって過ごしにくい不安定な環境が一時的にせよ発生することを示しています。
 その反面、砂泥質の干潟があれば、2枚貝など数多くの生物が定着できることも示しています。
 東京湾がもっと身近な海、"都民の前浜"(=潮干狩りもできる生物豊かな砂浜)と言えるようになるためには、水質の向上と生物が生息できる場を整備していくことが大切です。
 なお今回、大潮の干潮線よりやや深いホンビノスガイの生息場で、縦50cm×横50cmの枠取り調査を2回行いました。その結果、トリガイ、カガミガイ、アサリなども少し混入しましたが、殻長60mmから70mm大のホンビノスガイは、それぞれ22個体と33個体が生きた状態で採集できました。砂泥地の生産力の高さには驚くものがあります。


マテガイとカガミガイ(弱ったマテガイは砂中に潜れない)

マテガイとカガミガイ(弱ったマテガイは砂中に潜れない)

同砂中に潜れないマテガイ

同砂中に潜れないマテガイ

何か?に砕かれたばかりのカガミガイ

何か?に砕かれたばかりのカガミガイ

同カガミガイ(殻長40mmから50mm)

同カガミガイ(殻長40mmから50mm)殻表面の段差がやや大きい?

調査場所

調査場所(手前波打ち際の砂浜左より)

1枠分のホンビノスガイ

1枠分のホンビノスガイ(バット左22個体、右33個体)


平成19年7月18日 内湾水質調査結果

調査位置 St.1 羽田洲 St.2 羽田沖 St.3 15号地 St.4 三枚洲 St.5 お台場
時刻 9:02 9:30 10:47 10:19 11:28
天候
風向/風速(m/s) E/1.0 NE/3.5 NE/3.5 NE/5.0 NE/1.5
気温(℃) 20.2 21.5 22.0 21.4 22.8
実測水深(m) 5.1 6.7 6.3 4.7 2.7
透明度(m) 1.4 1.5 1.2 1.1 1.9
水色 5GY3/3 5GY3/3 5GY5/8 5GY3/3 5GY3/3
(暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色) (黄緑色) (暗灰黄緑色) (暗灰黄緑色)
水温(℃) 表層 21.30 21.87 22.09 22.53 22.50
底層(B-1)m 22.09 21.85 22.20 22.48 22.91
塩分(PPT) 表層 9.69 14.72 17.77 25.53 16.40
底層(B-1)m 26.85 29.70 30.06 28.45 21.89
pH 表層 7.67 7.65 7.72 7.81 7.46
底層(B-1)m 7.70 7.79 7.85 7.86 7.55
DO(mg/L) (%) 表層 6.47 6.06 4.74 2.94 3.64
% 76.6 74.4 54.6 39.1 46.7
底層(B-1)m 2.53 2.56 2.91 2.94 2.30
% 34.0 34.3 40.1 40.8 30.4
濁度(ppm) 表層 10.8 6.8 19.5 14.9 7.2
底層(B-1)m 13.3 8.9 9.4 7.0 6.7
電気
伝導率(mS/cm)
表層 16.26 25.38 29.25 38.71 26.74
底層(B-1)m 41.68 45.74 46.25 44.21 33.51