内湾調査平成18年9月 秋に観察できた生き物
平成18年9月 内湾調査結果
秋に観察できた生き物
アサリやマテガイなどが大量死した初夏(内湾調査結果平成18年6月参照)の貧酸素水を何とかしのぎ、8月下旬の調査時に問題もなく生息していたお台場のホンビノスガイ(写真4)も、9月上旬になって死亡している個体を見かけるようになりました。
そのホンビノスガイが生息する水深約3mの底泥部では、写真1、2のように白いカビ状の菌類が部分的に覆っており、その付近では既に死んでしまった個体、海底から飛び出した状態の個体(写真3)が数多く観察できました。
もちろん写真1の白いカビ状の間に黄色いもの(呼水管)が見ることができるように、生きている個体もいますが、湾奥で生きる定着性生物の厳しさを示しています。
なお、写真5は平成18年4月17日の内湾調査で小型底曳網に入網したクモヒトデ類やサルボウですが、9月13日の調査では全域でクモヒトデも見ることができませんでした。さらに、お台場沖の調査地点では、死んでからそれほど日数の経っていないサルボウの殻と死んだ直後の腐臭がするホンビノスガイが底曳網に入りました。
いずれにせよ、夏期を中心に表層水が高温・低塩分化しやすく、底層水との混合がない躍層が形成されやすくなります。また、水温が高い夏期は微生物による有機物の分解作用も活発で、その際、大量の酸素を消費します。このため、底泥付近ではDO(溶存酸素)、酸素飽和度が極端に低下してしまいます。9月13日に実施した内湾水質調査結果(下表)のSt.3から5の底層にもこれらの現象が現れており、2枚貝の生息限界以下のDO1以下の数値となっています。
今回、透明度も比較的高くなっていますが、適度な量の植物プランクトンによる光合成作用(=酸素補給)もなかったことがうかがえます。
写真1 9月8日 ホンビノスガイの呼水管と海底面 |
写真2 9月8日 同左 |
写真3 9月8日 底泥に潜れない弱ったホンビノスガイ |
写真4 8月23日には異変のなかったホンビノスガイ |
写真5 4月17日若洲ゴルフ場前の生物
下の写真は9月13日の潜水で観察できたお台場のアカニシです。弱ったホンビノスガイの近くで採取したのですが、2枚貝であるホンビノスガイとは違って海底を這って移動できる肉食性巻貝らしく、活発に餌(シオフキ)を捕食しているところでした(写真1)。
引き離してみると、シオフキの軟体部(肉)は生時と変わらないような透明感のある黄色でしたが、部分的に消化が進んでいるのか溶けていました。
なお、写真4はアカニシの卵塊です。ナギナタ状をしているのでナギナタホウズキと呼ばれていますが、干潮時に露出した杭や岩などに付いていたと見覚えのある方もいらっしゃるかと思います。
写真1 海底で捕食していた状態 |
写真2 海面にあげても捕らえたまま |
写真3 引き離してみると、シオフキが容易に開きました |
写真4 お台場の岩場や杭のそばで見ることのできる肉食性巻貝2種の卵塊(小さい鞘がイボニシ、大きいのがアカニシの卵塊) |
平成18年9月13日内湾水質調査結果
調査位置 | St.1 羽田洲 | St.2 羽田沖 | St.3 15号地 | St.4 三枚洲 | St.5 お台場 | |
時刻 | 8:55 | 9:59 | 11:11 | 10:35 | 12:10 | |
天候 | 曇り | 曇り | 曇り | 曇り | 曇り | |
風向/風速(m/s) | NNW/7.0 | NNW/7.0 | N/6.5 | N/5.5 | NW/3.0 | |
気温(℃) | 18.8 | 19.6 | 19.7 | 19.5 | 19.9 | |
実測水深(m) | 4.5 | 7.2 | 6.9 | 5.8 | 3.2 | |
透明度(m) | 2.2 | 1.6 | 1.6 | 1.5 | 2.1 | |
水色 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | 5GY3/3 | |
(暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | (暗灰黄緑色) | ||
水温(℃) | 表層 | 24.20 | 24.33 | 23.60 | 23.71 | 23.40 |
低層(B-1)m | 24.82 | 24.49 | 21.51 | 22.81 | 23.45 | |
塩分(PPT) | 表層 | 25.60 | 23.36 | 24.23 | 25.71 | 21.43 |
底層(B-1)m | 27.49 | 25.66 | 31.92 | 30.27 | 27.81 | |
pH | 表層 | 8.06 | 7.97 | 7.85 | 7.93 | 7.59 |
底層(B-1)m | 8.01 | 8.04 | 7.70 | 7.89 | 7.72 | |
DO (mg/L) (%=下段の値) |
表層 | 5.21 | 4.89 | 2.90 | 3.41 | 3.30 |
71.9 | 66.6 | 39.6 | 46.3 | 44.0 | ||
底層(B-1)m | 3.99 | 4.58 | 0.19 | 0.97 | 0.55 | |
55.5 | 63.6 | 3.2 | 14.3 | 7.9 | ||
濁度(ppm) | 表層 | 4.0 | 6.0 | 7.6 | 8.5 | 3.6 |
底層(B-1)m | 6.8 | 8.9 | 15.1 | 12.1 | 9.5 | |
電気 伝導率(mS/cm) |
表層 | 40.08 | 37.02 | 37.67 | 40.11 | 34.29 |
底層(B-1)m | 42.82 | 40.16 | 48.85 | 46.45 | 43.22 |
