河西・武藤・吉浦ほか(大島分場・八丈分場・技術管理部・水産課)

 三宅島の1983年度の噴火により多くの磯根漁場が失われた。フクトコブシの発生・生育に適した漁場造成のための事前調査を行った。
 三宅島地域の漁業の概況について、経営体・漁船漁業・漁業生産の各動向を記載した。環境調査のうち、海底地形・底質等の調査対象区域は島の北東側「砲台」から「クラマ根」に至る4.5kmの区間である。カラー空中写真測量により水深図化・底質分布図化した。底質は10地点の概況を記した。気象は測候所年報、海象は漁況海況予報事業の調査結果より概況と特性を記した。この海域の特性は黒潮の影響を強く受け、又流軸の変動によって水温・塩分が大きく変化する。前記調査対象区域の海洋環境を調査したところアノウ埼~サタドー岬付近には沿岸湧昇域がみられた。
 生物分布について調査海域10地点ライン調査を水深15m付近まで実施し、一覧表とした。植物相は紅藻類が大部分を占めテングサ類が多い。動物相は巻貝類が多く、ヒメクボガイ・フクトコブシの順で多い。対象生物としてフクトコプシについて調査した。産卵期は9月下旬~10月下旬と推定された。沈着稚貝は転石より10月23曰アノウ埼で受精後4~5日のものを採集した。成長について標識放流により5カ月の成長量を求めた。
 フクトコブシの分布密度を各ライン別に表とした。平均成貝1.3個/㎡、稚貝1.5個/㎡となった。資源量を分布図・底質別面積から推定すると調査海域水深15m以浅で35.2トンとなった。増殖場造成に当っての調査結果からみた改善点を各ラインごとに述べた。

研究要報190(1985.3) 

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