Ⅰ 濁水の淡水魚類に及ぼす影響について

増田

 小河内ダム建設に伴い多摩川の水に混濁状態が生じ、魚類に被害を及ぼしたが、その基礎資料が乏しく問題解決を長びかせた。濁水の基礎実験として5項目をとりあげた。
 ニジマスの呼吸量に及ぼす影響はF. G. HALLの水中呼吸測定装置の原理を応用したものを用い、現場の土の濃度を変えて実験の結果、ある濃度内では濁水中の方が、消費量が多い。
 けん忌量・致死量は内海水研式及び高安式装置を用いた。ニジマス0才のけん忌量は1/4000~1/6000であった。ハヤの発眼卵は濁水に比較的強く、ふ化直後の稚魚には非常に影響が大きく現われた。
 濁水の清澄剤の硫酸アルミニュウムに関する嫌忌量についてはアユでは実験困難で結果がでなかったが、ニジマスは1/60,000とみられた。ニジマスの致死量は1/5,000とみられる。

研究要報25(1960.10)

 

Ⅱ 奥多摩湖たん(湛)水後の多摩川(上流域)の水温の変化について

増田

 奥多摩湖たん水後、低温水を放流するようになったため、多摩川上流域の水温が極度に低下し、アユの成長を阻害する結果となったので今後の対策に資するため水温の観測を行った。
 水じょく地より羽村取水口の問に5点を設け1958~1959年の毎週火・金の午前10時観測した。たん水前後の比較では、たん水後は夏期に非常に低く、冬期はやや高くなっている。たん水後のアユの発育は非常に悪く、特に上流部ほどはなはだしい。上流部はアユからニジマスに切かえた方が、増殖効果があると考えられる。

研究要報25(1960.10)

 

Ⅲ ニジマスの貧血を伴う肝臓脂肪代謝障害について

増田

 ニジマスの貧血を伴った肝臓障害による変死について、餌料中の脂肪の酸化が原因ではないかと仮定して、人為的に病魚を作り、解剖、組織・生化学的な面から追求した。
 稚魚に魚油の過酸化物・干アミ等を投餌した。油脂の過酸化物はへい死の一因とみられるが、干アミ群その他と比較した場合、過酸化物の量とへい死率は必ずしも直線的関係を示さないため、その量で説明できない。マッコウ脳油群は疾病の発生がきわめて少なく、干アミは発病率が高かったが、その毒性は明らかでない。
 病魚は筋肉・肝臓にグリコーゲン含量が少なく、代謝機能の低下を示し、脂肪分は逆に病魚が多い。筋肉では病魚群の△10pが少ない傾向を示し、肝臓では干アミ群に特に少ない。
 病理組織学的には、肝臓では蓄積脂肪による肝細胞の破壊、じん臓では細尿管上皮細胞の核消失が明らかで、X病と一致するものとみられる。

研究要報25(1960.10)

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