31-1.コイ・キンギョの採卵用新人工魚巣

鈴木・高橋・岡庭

 天然産の材による魚巣には種々の欠点があるので、人工材であるポリエチレンテープを使用し、採卵を試みたところ好結果を得た。
 キンギョモ魚巣と比較したところ少し選択的な,忌避がみられたが、卵の付着率も従来の報告より劣ることはなかった。1束のテープ数も200本前後が適当と考えられた。
 欠点として乾きやすいため、移動の際の注意及び材の表面の忌水性により、水の表面に浮いた時、全く濡れない性質があるので予め1昼夜水に浸す等の注意が必要である。

研究要報31(1962.3)

 

31-2.循環濾過式水槽によるコイおよびキンギョのふ化飼育

高橋

 コイ・キンギョの採卵から「毛仔散らし」までの間の飼育は自然・人為条件等により不安定であるので、育成法の改良を試みた。循環濾過槽及び飼育水槽は1槽式と2槽式を用い、マゴイ・イロゴイ・リュウキンの3種を選び、餌料として強化離乳食を用いた。
 コイは水の循環量が大きすぎたことと、キンギョモの代謝による水質悪化等により減耗が大きかった。リュウキンはわずか10%の減耗であった。以上から現在の養殖法からふ化池の過程を取除く可能性は考えられるが、実用化までにはさらに多くの検討の余地がある。

研究要報31(1962.3)

 

31-3.循環濾過式水槽によるソウギョ・ハクレンふ化飼育

鈴木・高橋

 ふ化後の仔魚の飼育はこれまでの止水池を用いる方法では種々不充分な面があったので、コイ等の有望な成績をあげた循環濾過式水槽を用い、「毛仔ちらし」までの問、高密度な飼育を可能とした。
 江戸川に流下する卵を採集し、1槽式及び2槽式の飼育槽で餌料に強化離乳食・卵黄・コロミール・ユーグレナを用いて比較試験を行った。
 1槽式ではふ化後、循環速度により死亡(1.8ℓ/min以上)するものがでた。2槽式では糸状藻を食べ、これが鯛にかかって死ぬものがみられた。比較すれば1槽式が優れている。総体的にみて離乳食を用いた群の発育がよく、卵黄群も発育はよかったが投餌後、鼻上げがみられた。ユーグレナは消化が悪く、群の発育も極度に悪い。コロミールは水の状態を悪くし、仔魚の発育もよくない。

研究要報31(1962.3)

31.pdf [2137KB pdfファイル]