大内・小林・高橋・川名・小倉・三村

 都の金魚主産地の江戸川区で、1965年頃から養殖金魚の腹部が異常に膨張する病害が発生し、予防・治療方策が未解決であるので、これの防疫対策の確立をはかることを目的とした。1969年より研究を開始し、本病を「腎腫大症」と仮称した。養殖業者の池と水試の施設を使用し、1000個体の資料について発病、予防試験及び病源体の究明等を行った。
 腎重比(KW/BW)から病魚の基準としたところ、0.02以上が病魚で、0.01以下が正常魚であることが判り、発病の判定基準とした。
 発病試験は前記の2池で交換発病、発病比較の再試験でコンクリート池で腎重比は小さく、養魚池で大きい傾向がみられた。試験池で罹病魚の出現率は9月以降10~20%の病魚がみられた。腎重比の大きい資料を得た池の病魚の出現率は20~30%で、飼育管理のゆきとどいた池は腎重比は小で、病魚出現率も低い。
 接種試験では発病の徴候は認められなかった。本症の病原体について東大江草研究室で胞子虫(Sphaerospora Cyprini FUJITA)が検出され、本症に関与していると考えられた。
 サルファ剤による予防試験で投薬効果と考えられる傾向はみられたが、今後の課題としたい。

研究要報87(1971.3)

87.pdf [8731KB pdfファイル]