Ⅰ.東京都内湾干がた部における貝類分布の変遷について

塩屋・田口

 かつて優れた貝類漁場も都市排水等の影響により変ぼうしてきているので、今後の資源の見通しを得るため過去の貝類分布の変遷を調べた。1937年より1957年に至る問の7年の調査資料を用い、羽田州を5地区に分け、北よりAreaI~Vとし、二枚州は分割せず出現種類と1地点当たりの平均個体数等で比較した。
 羽田州AreaⅠでは有用貝類は1951年を頂天として減少の一途にある。AreaⅡはIと同様ハマグリの減少が目立ち雑貝が増加傾向にある。AreaⅢもI.Ⅱと同様ハマグリが減り、アサリ・シオフキも減少し生産力が低下している。AreaⅣはハマグリの減少を除き、近年生産力が増加傾向にあったが、1957年の多摩川の水質汚濁により被害を受け貧弱な漁場となった。AreaVもⅣと同様である。
 三枚州はアサリ・ハマグリ共1952年まで上昇し、以後減少している。ハマグリの減少とホトトギスの増加が目立った。

研究用報15(1958.6)

 

Ⅱ.東京都内湾干がた部における貝類分布の現況について

塩屋・田口

 貝類の主漁場である羽田州・三枚州の貝類資源の現況を知るため1957年夏期調査を実施した。羽田州は北よりAreaI~Vに区分し、三枚州は区分することなしに検討した。
 羽田州は1956年末より1957年4月に至る多摩川の水質汚濁によりAreaⅣ.V及びⅡ.Ⅲの一部の有用貝類が大量異常変死したため分布は極めて貧相であった。
 三枚州はアサリ・シオフキ等の分布も多く、稚貝も相当量みられる。ホトトギスが南東部にちょう密にみられた。

研究要報15(1958.6)

15.pdf [6134KB pdfファイル]