有馬

 伊豆諸島海域の栽培漁業を推進するため、モデル地域として新島本村を選定し、アワビの栽培漁業の実証方策を樹立することを目的とした。資料検討、試験成果の応用検討を行い、漁業者・行政・研究機関で問題点を摘出し、解決方法を協議した。
 本地域の地理的・社会的条件を把握し、水産業の実態を明らかにした。伊豆諸島の貝類の栽培漁業は、水試の人工種苗の放流に始まり、研究グループが栽培漁場で生産管理することで進められてきた。本地区の貝類漁業の実態及び栽培漁場と漁場環境を明らかにした。アワビの放流実績は、新島・若郷・式根島で1972~1980年の9年間に計約28万個で、再捕貝の混獲率は1978年11.7%、1980年23.9%であった。
 中間育成は、若郷では研究グループがポリビク及び小割生費を用いて海中で、式根島では漁協が陸上蓄養池で実施し、共に問題点もあったが、村の協力でほぼ解決した。
 栽培漁業展開の問題点として、大型種苗の放流・放流技術確立のための研究体制、“場”の確保等があげられ、解決の方法を示した。中間育成の問題点として、陸上・海上施設の得失が摘出され、また飼育上から夏季の高い水温によるへい死・餌料の確保等があげられ、解決方法を提言した。

研究要報154(1982.3)

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