西村・村井・青木・木村

 小笠原海域の高水温・低汚染等の特徴を生かした新しい水産業開発を目指し、魚類の種苗生産を試みた。マダイの早期大型種苗生産とポストハマチ魚種の種苗生産を2本柱として取組んだ。
 1984年度は小笠原で採卵養成したマダイ2年魚を用いて採卵養成試験を実施した。採卵は親魚37尾を用い、前年同様の方法で行い、4月5日~6月11日に総数2,260万粒を得た。仔魚の養成は500ℓのプラスチック水槽6槽に各2万粒の卵を収容し、初期餌料としてワムシ・チグリオパス・アルテミア幼生等を用いた。生残は39曰で8%となった。
 早期種苗を用いたマダイの養殖試験を行った。4月10曰採卵し、56日間陸上水槽で飼育した後、二見湾内の網生費に移した。飼育開始時尾叉長4.0cm、体重0.7gが316日後に26.3cm、436.5gとなった。九州沿岸の成長例と比較し、父島の当才魚の成長は半年近く早いと考えられる。
 新魚種開発としてシマアジの種苗生産を試みた。採卵のための親魚は釣獲魚を約4年間飼育した。採卵前の約2年は生殖腺の成熟促進と肥満低下のため餌料組成を段階的に変えた。採卵のため陸上池に収容後4日目、1984年12月29日より産卵が確認され、1985年3月1日まで総数5,453万粒を得た。

研究要報188(1985.10) 

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