三村ほか(奥多摩分場)

 都の3研究機関のプロジェクトチームによる「多摩地域における自然環境と動植物生態との関連に関する調査研究」のうち奥多摩分場の担当した部分の最終報告である。
〔イワナ資源の保護と増殖に関する研究〕 都内で採集されたイワナの形態をみると体側の橙色斑点は標準体長168mm以上には全個体に存在するが、150mm以下では全くみられない。分布は採集・聴き取りで曰原川各支流が主で、日原川本流・多摩川でも僅かに分布していることが判った。
 年令は鱗に成長休止帯が年に1度形成されることがうかがえ、休止帯で年令査定ができると考えられた。成長は満2年で標準体長12cm、3年で15cmに成長する。体重(W)と標準体長(L)の関係はW=26.03×10-62.906である。
 釣獲採集したイワナは1年魚62.5%、2年魚31.8%であった。都の漁獲制限体長は全長12cmであるので、2年魚の漁獲は阻止できない。成熟が2年の秋であるので現規則では資源の枯渇の恐れがある。
 発眼卵の埋設放流を2年に計4点で実施した。ふ化稚魚は確認されたが、効果についてはさらに調査の必要がある。
〔ヴグイの資源保護に関する研究〕 多摩川水系各漁協が実施しているウグイの人工産卵床の造成法、集まる魚の生態について調査した。
 人工採卵床の造成方法について主として聴取りにより詳述した。産卵生態については実際に造成された産卵床の観察等から産卵期は秋川で4月中旬~5月初旬、多摩川ではl旬遅れることがわかった。産卵床に集魚のみられるのは4~7日間で、初期に大型魚が多く次第に小型化する。集魚した魚の体長組成・産卵数等も調査した。
 産卵床の造成には藻類等の付着した砂利が必要と考えられた。又ダム放水の水位の変動は保護上大きな問題である。
〔河川の環境に関する研究〕 多摩川の支流である平井川の水生生物とその生息環境を調査した。今回の調査で採集された魚類は9科19属19種であった。全川を通じ昆虫類が26科45種、底生動物では甲殻類2種、ミズダニ類1種、ヒル類1種、渦虫類1種でこれらの出現状況およびDⅠ、BIを表にした。1979年8月全調査点7点でDIは6.1~10.1、BIは31~49の範囲で水質は貧腐水性を示した。

研究要報152(1980.8)

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