田中ほか(奥多摩分塲・水産課・技術管理部)

 水産庁の委託により小河内ダムの放水する低温水が魚類(アユ)に及ぼす影響を調査した。1981~1985の5カ年のまとめで、従来は全国総点検調査といった。多摩川上流域の自然環境、社会環境及び多摩川の内水面漁業の現状、小河内ダムの概要、多摩川の概要等を文献等によりとりまとめた。
 奥多摩のアユの漁獲量については、聞きとり.アンケートによって調査し、過去に実施したものを含めて検討した結果、漁場別の漁獲率(漁獲尾数/放流尾数)を時系列的にみたが、低温水の漁獲に及ぼす影響は明らかにできなかった。解禁日のビクのぞき調査ではダムの放流水量と漁獲尾数に負の相関がみられるようでもあるが明確ではない。
 冷水の影響を放流種苗と漁獲魚の体型から、また魚体成分から調査したが、明らかな結果は得られなかった。水温別の比較飼育試験では20°C・15℃・10℃の各区で増重量は高水温ほどよい。水温別の忌避試験では設定水温16~19℃で1℃の水温低下でも忌避がみられた。
 人工水路と多摩川で水温の相違による付着藻類の繁殖状況を調べた。前者では繁茂と水温の関係は季節によって異るが、5~6月は水温が高い区が乾重量も多い。多摩川では水温の高い場所が乾重量が多かった。

研究要報192(1986.3)  

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