吉田

 伊豆諸島のテングサ漁業の最近の動向について、テングサに依存度の高い大島泉津漁協とテングサと漁船漁業両者に依存する神津島漁協を選び、操業実態・水揚等を調査した。
 漁業総水場金額に占めるテングサ類の割合は、泉津では1959~1961年には85%強であったが、1970年には50%を割った。神津島では1955~1959年60%以上であったが、1971~1972年には10%前後まで低下している。
 稼動状況は泉津・神津島共に1961年以後著しく減少している。この傾向は採取者の二種兼業者が減り、テングサ専門漁業者に固定化されたとみることができる。泉津では単位当りの水場金額は年々上昇の傾向にあり、延稼動者数とは負の関係がみられる。
 テングサ漁業以外をみると泉津では採貝漁業に、神津島では建切網漁業に比重が高まっている。
 以上のことはテングサ類の価格が上昇しているにもかかわらず、消費者物価や卸売物価の伸び率に及ばないこと、貝類の価格上昇が著しいこと、島内他産業の需要の増大、高所得、漁業者の老令化等が複雑にからみ合った現象である。

研究要報110(1974.3)

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