三木ほか(八丈分場・技術管理部・水産課)

 八丈島においてフクトコブシの発生及び成育に適した漁場環境を土木工法により大規模に造成するための調査を実施した。地区の漁業の概況について記した。
 調査は事業予定の中ノ郷地先汐問地区と優秀な三根地先の素潜り漁場を対象に選び、環境と生物調査を実施し、有効な開発方法を検討した。
 環境については調査漁場は島の南東に開いた湾入部約100ヘクタール、海底傾斜は1/60~1/30の範囲で底質は転石が主体で砂と岩盤で起伏が少ない。一方三根地先は溶岩で起伏が激しい地形である。気象条件・島周辺の流況等各種資料により検討した。調査漁場の流動は水深5~30mでは潮汐流が卓越し、50m以深では黒潮の影響が大である。風向がEないしS方向の時の波高は三根のほぼ2倍となる。
 生物調査では、両地区共に動物組成は類似し、巻貝類が37~50%に及びフクトコブシが優占する。量は三根が3~4倍で勝る。海藻はみられない。又フクトコブシの分布密度も三根が多い。平均推定資源量は調査漁場4トン、三根30トンであった。
 施設試験として2種の増殖ブロックと蛇カゴヘの動物の住み着きは多かった。

研究要報140(1970.3)

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