倉田・青木・木村

 小笠原においてアオウミガメ放流の回帰率を高める手法の研究を行った。1982年度の報告と併せ過去3ヵ年の研究結果から得られた問題点を記した。
種苗生産のための採卵は親ガメ38頭を用いた。産卵は5月12曰~8月30曰の期間行われ、盛期は7月上旬であった。13,429粒を採卵し、埋卵は従来の方法によったが、ふ化率は平均53.1%で前年より5%低下した。これは台風に伴う雨水による後期胚の死亡と考えられた。
 放流はふ化椎ガメ5,852頭を、親ガメ・未成熟ガメは計176頭を前年同様の標識をして実施した。再捕は8頭で、2頭は産卵回帰、5頭が日本本土で再捕された。
仔ガメの飼育試験を1982年8月より133日間976頭で行った。生残率26.5%となった。8.9月に皮膚病、9.10月に口腔内腫瘍が発生し、さらに10~1月には皮膚膿瘍病に約80%が罹病した。
 小笠原海域の天然産卵を調査した。各列島計延産卵頭数は113頭を確認した。
 3ヵ年研究結果の問題点として、①1才ガメ飼育の疾病対策、②放流の標識の開発、③回帰状況の解析、③未成熟ガメの生態解明があげられる。

研究要報169(1983.11)

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