Ⅰ.東京都内湾干潟部における貝類分布について

塩屋・稲葉

 この調査は1948年以降5回実施され、貝類資源の変動を把握するため、1959年5月~7月の間に第6回目の調査を実施した。調査区域は、羽田州は北よりAreaI~Vまで5区分し、三枚州は南よりAreaI~Ⅱと2区分した。
 総合してみると全般的にアサリの増加、しかも稚貝が増している。又これと共にAnnelidaが増加していることは、底質汚染と関連がある程度みられることから警戒を要する。
 羽田州ではAreaIはアサリに不適、Ⅱのアサリ椎貝は増加しているが、夏期のへい死が考えられる。Ⅲ・Ⅳは好漁場となっている。Vはアサリ椎貝の発生が良好である。
 三枚州のArealはアサリ・ハマグリの増加、ホトトギスの減少で期待できるが、新荒川・新中川の水質汚濁による影響が憂慮される。Ⅱの漁場価値はIよりはるかに劣る。

研究要報20(1960.3)

 

Ⅱ.新中川河口のシジミについて

塩屋・稲葉

 シジミの分布状況を把握するため1957年7月新中川河口付近19点(200m間隔、基盤目)の枠取調査を実施した。
 調査区域全般にヤマトシジミが非常に多く分布し、その他7種の貝類が生息する。多毛類は全般に多い。底質は粒子組成から河川からのたい積がみられ、Humus量(腐植質)をみると総体的に汚染は少ないが、新中川河口近くの表泥は汚染が進んでいる。
 調査区域付近に最近ヤマトシジミの沈着が多くなりつつある。従来もかなり沈着したが、成長しないうちに何らかの原因でへい死し、常に調査時のような稚貝の多い分布状況にあることが考えられる。

研究要報20(1960.3)

 

Ⅲ.東京都内湾干潟部(貝類漁場)底土中の腐植質(Humus)の分布について

古井戸・古瀬・梶沼・松原・長谷川

 内湾の水質汚濁状況把握の一貫として干潟の底土中の腐植質の分布状況を調査検討した。調査は1959年7月実施し、羽田州は区域を5区分し、北側よりAreaI~Vとし、三枚州は2区分し、南側よりAreaI、Ⅱとして地域ごとに検討した。
 羽田州Arealは最もHumus量の多い地域で酸化層も薄い。ⅡもIに次ぎ多い。Ⅲは州の中央部でその量は比較的少ない。ⅣもⅢに近い分布を示し、酸化層も共にやや厚い。Vは多摩川に近く、Ⅲ、Ⅳより僅かに多い分布を示している。
 三枚州AreaIは沖の地域で、平均値で羽田州のAreaVに近い値を示している。ⅡもIに近い。
 酸化層の厚さと表泥のHumus量との間に相関はみられない。1932年の調査と比較すると全域にわたりやや減少しており、羽田州と三枚州の比較では三枚州の方が一般に低い。

研究要報20(1960.3)

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