長沼ほか(温水魚研究部・技術管理部)

 多摩川のアユ資源の拡大再生産を促進する目的で、下流部における効果的な魚道設置に必要な資料を得るため、調布取水所防潮堰(1982年)に引続き調査を行った。
 堰の概要と魚道の構造等は資料と実測により調査し、魚類の遡上と降下状況は魚道最上段部に採捕網を設置して24時間連続観測を行うとともにその他人工種苗アユを用いて遡上時間の調査を行った。降下については魚道□下部に網を張って調査した。
 堰堤はコンクリート雛段式重力直線堤で堤高は左岸側2.7m、右岸側3.6mである。魚道の構造は全長27.2m、幅員4.0m、勾配1/8で階段は9段で、隔壁間2.5m、高差は上から0、0.4、以下0.3mとなっている。
 1983年8月6日、魚道の越流水深は17~27cmで越流速は2m/sec以上であった。アユ放流による遡上試験結果から夜間に降下したと考えられるアユは遡ることができなかったものと判断された。
 本魚道の問題点は①河床の低下による堤前面の段差、②下流部の堤体上面の水深の浅いこと、③隔壁間高差が大きいこと、④魚道内流速の速いこと。⑤魚道口に誘導のための策のないことなどがあげられる。

付録 二ケ領上河原堰堤より上流域の堰堤図

研究要報175(1984.3)

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