Ⅰ 神津島恩馳漁場調査

五十嵐・小西・今井

 漁場の有効利用をはかるため都南丸により海況・海底地形・底質の調査を、テングサについては聞き取り調査を行った。
 海況は天候不良で十分な結果が得られず、海底地形は13方位線を設けて調査したところ恩馳島周辺は40~50m及び70~80mの間に急傾斜があり、南西側に広い。この地帯の底生生物の再調査が必要である。底質はドレッヂが軽量のため岩盤の採集は不可能であったが、各地点殆んど岩盤でその上の堆積物が採集されたものと思われる。採集物は海藻類と火山系噴火物の沈積したものが多い。磯採集により25種、市場調査で32種の魚類がみられた。ヒラクサ漁業については、操業船数は1954年、水揚量は1953年に急増している。

研究要報4(1956.3)

 

Ⅱ 大島に移殖されたエゾアワビについて(第1報)

倉田・五十嵐・梶沼

 1955年11月宮城県産のエゾアワビを大島泉津に移殖放流の試みに際し、輸送を担当し、調査を行った。輸送46時間の斃死率4.5%、蓄養を含め5日後の斃死率は23.9%で、トラック・船便輸送を考慮すれば比較的好成績であった。斃死個体の損傷部位は頭部・吻部が多かった。
 輸送放流についての注意点として、(1)産地における損傷個体の除去(2)長時間輸送の場合、途中の一時蓄養は斃死率を低くすることができる(3)放流前の蓄養は活力の強弱により分けて蓄養する方が斃死を少なくすることができる 等が考えられる。

研究要報4(1956.3)

 

Ⅲ 底曳網で漁獲された大島近海の魚貝類(第1報)

五十嵐・倉田

 深部漁場の開発を目的として底曳漁船により1954年6月大島・利島間の水深250~300mの生物を採集した。
 魚類は27科35種、このうち新しく採集されたものは22科29種である。漁業上重要と思われるものはオオメエソ・テングカスベ・ギンザメである。貝類は26種(原軟体類1、腹足類21、斧足類4)で、新しく採集されたものは18種である。

研究要報4(1956.3)

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