仲村・三木・浅井・菊地

 八丈島のフクトコブシ漁業の実態と資源変動要因について調査した。
 八丈島の漁業生産に占めるフクトコブシの地位は高く、近年機根漁業は採藻から採貝へ移行の傾向にある。漁場は20m以浅で、海底地形を3つにタイプ分けして各地先別の特色を示した。漁場の行使は素潜りと潜水器によるが、1970~1974年の各地先の状況を示した。全体の7割が潜水器による漁獲である。
 分布を漁獲量及び聞取り結果によって推定すると島の北東側は6.5トン/km2、南西側は2.3トン/km2となった。漁期初めの単位当り漁獲量とその年の漁獲量との間に相関がみられた。
 中之郷地先の漁獲記録から素潜りと潜水器の各漁場の推定ストック量と漁獲率を算定した。素潜りでは1973.1974年の高い漁獲率と1974年の強い漁獲強度にもかかわらず資源量は回復している。潜水器は反対に1973・1974年の大量漁獲により資源量は減少している。潜水器漁場では1974年漁獲物が漁期末に小型化し乱獲の傾向がみられた。
 資源の変動要因の一つとして、ウネリと漁獲量の関係を中之郷の素潜りの漁獲量から調査した。累積のウネリ日数との関係で1~4月に最も強い負の相関がみられた。この時期の摂餌行動と関係深いと考えられる。

研究要報119(1975.3)

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