高橋・川名

 江戸川区周辺の養魚池で発生したキンギョの腹部が膨張する奇病について前報で腎腫大症と仮称した。本病の対策が急がれ、予防法の確立のための感染に関する研究及び病源虫の生活史を追求した。
 人工感染試験による感染時期と経路を究明のため江戸川区の養殖業者の池を利用して7~11月に毎月1回感染及び予防試験を行った。7~8月に約50%の発病魚がみられ、9月以降低下した。又サルファ剤の予防効果は認められなかった。外観と解剖所見では発病の判定はできなかった。
 上記と同様の目的でコンクリート池でイケスを用いた試験を行った。病魚を経口投与、病魚との混養、ABSの添加の何れも感染しなかった。発病魚の腎臓の病変部は小さく、業者の池のものと異った。
 病状の季節的変化とズキンネンエキムシの生活史を究明するため、養殖業者の池で発病した魚の腎臓の組織標本を1年間調べた。この胞子虫は約1年周期の生活史を有し、感染の経路として病魚の排泄口の可能性が考えられた。時期は3~7月に胞子がみられることよりこの時期と思われる。患部には集合管・細尿管の上皮細胞の異常増殖がみられる。腎重比2%以上のものはほとんど病魚であった。

研究要報98(1972.3)

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