長谷川・三木ほか(温水魚研究部)

 東京湾奥部のマハゼの産卵場を確認し、環境要因との関係を究明して増殖・保護の基礎資料とする目的で調査を実施した。
 産卵期はKG値から推定して3月中旬~下旬が盛期と考えられた。産卵孔は沖合より干潟部に向けて潜水により調査した。1981年より1983年まで8回調査し、海底に直径3~4cmの円型の孔を認め、マハゼの産卵孔と確認した。産卵生息孔構造は合成樹脂を注入して調査した結果、孔道は円筒型で、産卵生息孔は孔道4~5本の産卵室からできている。産卵生息孔より受精卵を採集できた。
 産卵生息孔の分布を知るため、河口筋・湾奥部・埋立地前面等の地形を代表する地点を選び調査した。荒川河口と10号東側を除き全調査地点で確認した。底質は全地点で粘土・シルトが占め、産卵生息孔の確認されなかった地点との差異は認められなかった。調査地点の水深は5.6~11.5mであった。
 マハゼの産卵生態を時系列的にみると、それぞれの盛期は生息孔を掘る期間2月上旬~3月上旬、産卵期間3月中旬~下旬、保護期間3月中旬~4月下旬、ふ化期間4月上旬~下旬と推定された。

研究要報182(1985.3)