96-1.小笠原諸島水産開発基礎調査報告書Ⅲアオウミガメ産卵・ふ化場造成指導

西村

 小笠原のアオウミガメ放流事業は1913~1939年まで38,971頭の放流後、大戦のため中断されていたが、産卵・ふ化場の建設と事業を再開することになった。小笠原島漁協が行う建設に技術指導を行った。
 予備調査として父島・兄島等の天然産卵場の亀路勾配・砂質を調査した。勾配は1m/10m、砂質については砂の採取に関し問題があるので、建設用砂を用いることとして指導した。
 産卵・ふ化事業の規模算定するとともに設計・工事仕様を作成した。
 今後の問題点として採卵後のカメの処理(放流か、食用か)の問題、管理面で労力の確保、2・3の技術的問題及び放流後の稚ガメの回遊の検討等があげられる。


96-2.小笠原諸島水産開発基礎調査報告書Ⅲアオウミガメの増殖に関する生態学的知見

斎藤・山峯・倉田・三村

 小笠原島漁協の産卵・ふ化場において親ガメの産卵行動等について観察を行った。
 産卵に上陸したカメを採捕し、採卵用とした。20頭の平均曲背甲長は98.4cm、体重は125kgであった。産卵生態について蓄養池内の親ガメの行動・上陸から産卵穴を掘るまでの行動・産卵行動を観察し、記載した。
 一晩に上陸した最高頭数は6頭で同一カメが一晩に上陸した最高回数は5回であった。そして潮汐と月令には関係ないようである。産卵のため上陸する時間は20時以降、夜明け前の4時30分までであった。
 産卵頭数は延10頭(上陸延36頭)で、1回産卵は8頭、2回が1頭、3回が1頭であった。蓄養カメは捕獲後3~22日で産卵した。正常産卵数は65~149個で平均107個である。卵は球形で真円に近く、柔かく平均卵径は4.33~4.63cm、卵重は45.2~53.9gであった。
 埋卵は穴の径40cm、深さ70cmに1,130個を行い、ふ化数は119頭でふ化率10.5%と著しく悪かった。原因は産卵直後の埋卵作業で卵の胚位置の移動が激しかったものと推定した。ふ化日数は平均47.7日であった。ふ化した仔ガメは19時30分~1時までの問に現われる。
 仔ガメの成長、奇形の出現、標識放流と再捕について記した。

 

96-3.小笠原諸島水産開発基礎調査報告Ⅲ父島・母島列島近海夏季の漁海況

石川

 1970年7月6~26日、調査監視船「興洋」により調査を行った。
 海流はほぼ一定した弱い北上流がある、水温は傾斜が少なく変化があまりない、水色は2~3、透明度は高い等が海況の概要である。漁場調査は父島列島東沖を行ったが、水深100~200mでは海底の起伏がなく、平坦な傾斜になっている。東島・孫島東沖の水深150~200m付近で魚群の集合状態が確認された。今後の問題として「調査要領」を定めた。
 以上の報告と別に小笠原支庁水産係による次の2報告が続いて記載されている。
 小笠原周辺海況速報(案)
 父島二見港内水温定置観測

研究要報96(1971.11)

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