三村・田中・井上・加藤・山川

 多摩川上流に1957年小河内ダムが建設され、川の流量が減少し、低水温となった。低水温が魚類に及ぼす影響を調査した。
 ダムは1957年に竣工し、1959年満水位になった。常時使用される取水口は有効水深73.5mにある。取水ロ付近では水温は10~11月に14°Cまで上昇するが、それ以外は7~9°Cである。
 多摩川の河川形態、構築物を既存の資料より調査した。漁業の実態は奥多摩漁協の組合員1980年度1,928人で、入漁者6万人と推定された。アユは毎年放流数が増加しており、1981年には稚アユ84万尾が放流された。
 ダム完成後水温が大きく変化したといわれているが、これを裏付ける的確な観測記録はないが、各種の記録等からみてダム完成後の水温低下はうかがえる。
 生息魚類相の変遷をみるとたん水以前に16種みられたが、たん水後ナマズとギバチがみられなくなり、アマゴ他4種が出現した。たん水後は冷水域に生息可能な種が優占するようになった。
 アユの漁獲量は解禁前のダムの放水量と解禁日の豊漁・不漁の関係で一般に放水量の少ないときは豊漁となっている。
 天然アユの成長に対する低温の影響が、体型・肝臓組織中の粗脂肪・グリコーゲン量にどのように現われるか調査した。

研究要報162(1982.3)

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