A.三宅島水産開発事業報告

小西・倉田・阿部・田中・黒雲

 近年のテングサの不振により、これの増殖対策と新規漁法の導入併用を求める要望が強いので、三宅島水産開発事業が実施されることとなり、その一環として島の沿岸の海況・魚群・海底などの調査を1959年10月に実施した。
 8基点より放射状に水深10~200mの海底及び魚群を魚探で調査し、又底魚釣で漁業試験を行った。はご釣の結果、ウメイロ・アオダイの好魚場を数個所発見した。海底調査として底質・底生生物、海洋調査として水温・塩素量・潮流・浮遊生物等の調査を実施した。
 三宅島大久保浜の地引網漁業の実態を調査し、漁具の構成・漁法・漁場と漁獲物等が判明したのでこれを付記した。

研究要報21(1960.3)

 

B.伊豆諸島近海における黒潮の消長と春期漁況について

小西

 標題について都南丸の毎年2月の観測(大島SSE線上30カイリ毎に10点)結果を利用し、又漁獲量は農林統計により検討した。
 1954年より1959年の間、大島~鳥島の水温断面分布からみると冬期の暖水帯は年により変動している。19℃水塊を黒潮流帯とみなし、黒潮が観測点との交点と観測点間の鉛直平均水温差の最大地点を冷水塊と黒潮の潮境とするとこれも年々移動しているが、プランクトン量は常に多い。
 ハマトビウオは各島で漁獲のピークが現われる年は黒潮と沿岸冷水塊との潮境が形成されたときである。大島近海のサバとマカジキの漁獲量は正の相関(係数十0.97)を示し、冷水塊の縮小若しくは消滅したときに好漁となる。

研究要報21(1960.3)

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