田中ほか(奥多摩分場・水産課)

 多摩川上流の小河内ダムの放流する冷水が魚類、特にアユの生態に及ぼす影響について1981年度より水産庁の委託により調査した。
 アユの放流降下に対する低温水の影響を究明するため多摩川(奥多摩漁協管内)及び秋川(秋川漁協管内)の解禁日のピクのぞき調査とアンケートによる漁獲調査を行った。多摩川では冷水の影響を受ける地先は他に比し、平均漁獲尾数は少なかった。秋川は平均漁獲尾数9.4で多摩川4.2に勝った。アンケートによる奥多摩漁協組合員の出漁日数は1~5日/年が37%で最も多い。白丸ダム上流から地先別にみると下流にいくほど漁獲尾数は多い。
 奥多摩漁協では椎アユと成魚アユを放流しているが、成長した後の区別がつきにくく、調査に混乱を生じている。そこで、体型について各種調査をしたが、放流後2~3.5月で捕獲したものでは区別できなかった。
 さらに養殖アユに脂肪分の多いことに着目して魚体分析を行った。内臓中の粗脂肪量は養殖アユ40%以上、多摩川生育アユ30%以下と考えられた。
 水温別に飼育試験の結果、水温の高いほうが増重量・曰間成長率・摂餌率ともに良く、内臓中の粗脂肪量は明らかな差はなかった。

研究要報183(1984.3)

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