長谷川・三木・長沼ほか

 最近、多摩川を始め東京内湾に流入する河川に椎アユの遡上がみられるようになり、椎アユの資源生態を明らかにし、種苗としての活用を目的として調査を行った。
 1983年3~5月、大田区調布取水防潮堰下流200mに小型定置網を設置し、椎アユを採捕した。調査期間中網は65日間設置したが、全ての日に、合計12,647尾、35.7kgが採捕された。採捕量と環境の関係は次のとおりであった。水温は13~14℃で多く採捕された。流下水量は平均22㎡/secであったが、増水時は網を撤去した。濁度は12°をピークに増加するに従い採捕数は減少した。潮汐との関係は小潮時付近の曰が多かった。水質ではDO値の高い時に多く、COD・PH・塩
素イオン濃度等は明確な関係は認められない。
 椎アユの平均全長7.6cm、体重2.6gであった。日別全長は5月上旬まで小型化し、以後横這いか、やや大きくなった。肥満度は4月上旬まで横這い、4月下旬まで減少、その後上昇の傾向がみられた。江戸川産や静岡産人工種苗に比べやせ型であった。
 4月上旬より上流で放流が行われており、採捕アユが湾内から遡上したものか否か考察した。5月25日以降肥満度の増加があり、降下アユの混獲も考えられるが、大半は遡上アユと思われた。

研究要報178(1984.5)

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