西村*・吉田*・山峯*・西村ほか**
〔栽培漁業展開を前提とした式根島の磯根漁場環境の検討*〕
 式根島の蓄養殖適地と考えられる場所12カ所の海底地形・生物相・潮流等の調査を行った。
 調査の結果次のことが考えられた。島の北東側(長堀鼻~ヒラトコ)の入江は魚類の短期蓄養に適す。島の南東側(ヒラトコーキクガタジマ)の入江は網生管・ノリ養殖に有望である。島の南西側(キクガタジマー袴崎)はノリ養殖に適する。島の北西側(袴崎~長堀鼻)はノリ養殖が可能である。
〔貝類栽培漁業の展開**〕
 大島分塲における1974年のアワビの種苗生産経過を記載した。

種類 月日 誘発方法

採卵数(千個)

受精率(%)

浮上率(%)

収容数(千個)

生産稚貝数(個)

歩留(%)

メガイアワビ

11.25

干出 8,500 90 28 2,100 6,545 0.338

27

3,000 90 20 540 4,587 0.836
クロアワビ 12. 6 紫外線 4,000 98 77 3,020 42,643 1.393

12 3,500 91 69 2,210 13,951 0.631

    19,000     7,870 67,726 0.860

 種苗育成技術改良実験として飼育条件によるアワビ稚貝の成長比較を行った。メガイを人工飼料とアオサで飼育した結果、3mm以上の稚貝では人工飼料が卓越した。照度別に人工飼料・アオサの成長比較を行ったが、人工飼料では暗区、アオサでは明区が成長がよかった。
 初期餌料として付着珪藻類の培養種の選択・培養・保存方法を記載した。
 放流は栽培漁場と呼ぶ一定範囲を定め、一定期間管理する漁場を設けることを漁業者・行政機関等で協議した。放流基準を定め、1975年度に大島~小笠原島の12カ所に57,500個を放流した。栽培漁場の海底地形を類型化するとともに各々の環境条件を調査した。
 稚アワビの輸送方法について検討した。発砲スチロール容器を用いて大島より三宅島~小笠原へ航空機・船舶で輸送したが、24時間で20℃、48時間で15℃で実用化が可能である。

研究要報126(1976.3)