岡村・米山・井沢ほか(大島分塲・水産課)

 神津島にイセエビの生育に適した環境を土木工法により大規模に造成するため(沿整事業)の事前調査を行った。
 地区の漁業の概要について調査を行った。調査地区選定の理由はイセエビ刺網漁業は重要な漁業で生産量は漸減傾向にあること、漁場管理体制が確立されていること、地形・環境が育成場造成に適していることによった。
 環境調査は地形・地質・気象・海象について実施した。調査漁場の観音浦地区は島の東北東側で転石海岸と岩礁が交互につながり、海底は25m以浅は急峻で複雑な地形であるが、25m以深は勾配1/40の砂地となっている。
 生物調査の結果、雌の抱卵期は5月上旬~9月上旬と考えられた。神津島・大島でヒラクサを潜水採取し、この中からプエルルス33尾、初期稚エビ21尾を得た。プエルルスの頭胸甲長は平均7.66mmであった。第Ⅰ期稚エビまでの変態期間は1~8曰、平均4.8曰であった。
 神津島では成エビの生息の多い地形は①崖又はケーソンの深い割れ目、②コンクリートブロック下部であった。標識放流の結果、最大移動距離9kmで、牛鼻放流群では1.5km以遠の移動は16.1%であった。
 漁場造成予定地(島の東~北東)の植物相は水深10mよりヒラクサが多くなり、20mでは一面ヒラクサとなる。

研究要報165(1983.3)

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